技術開発

デザイン

米国デザイン拠点Caltyの設立

「Calty Design Research, Inc.」は、1973年、他社に先駆けて米国のニーズや嗜好に応えるため、カリフォルニア州エルセグンドにデザイン拠点として設立。

1978年、ニューポートビーチの新社屋に移転し、デザイン開発活動を続けてきた。以来、2代目「セリカ」、初代「エスティマ」(米国名:プレビア)、3代目「ソアラ」(米国名:レクサス SC400)など、好評を得ているデザイン創出をしてきたが、1991年、先行デザイン開発業務、室内デザイン、およびカラーデザインの研究開発業務を充実させるため、デザイン棟および既存施設の増改築を実施した。

  • Calty-New Port Beach

    Calty-New Port Beach

さらに2004年、北米での本格的な現地生産車デザイン開発に向けて設計機能と隣接したToyota Technical Center地内に「Calty-Ann Arbor」を設立した。

  • Calty-Ann Arbor

    Calty-Ann Arbor

初代エスティマ

トヨタは1990年に、「エスティマ」を発表。この1Box車は乗用用途専用に設計され、その基本的な室内パッケージは、米国デザイン拠点「Calty Design Research, Inc.」のデザイナーからの提案であった。そのデザイナーの夢に日本のエンジニアが応えるかたちで、エンジンを傾け、前輪と後輪の間に搭載するという特異なレイアウトが出来上がった。外形デザインもCaltyが手がけたもので、「EGG ON A BOX」という単純明快なスタイルで登場した。室内デザインはトヨタ車体デザイン部が手がけ、こちらも未来的かつ乗用車的なデザインであった。グッドデザイン賞では輸送機器部門の「部門賞」を受賞、この車を機にキャブワゴンの乗用車化は一気に加速することとなった。

  • 初代「エスティマ」・Calty 作オリジナルスケッチ

    初代「エスティマ」・Calty 作オリジナルスケッチ

  • 提案モデル

    提案モデル

  • 初代「エスティマ」室内モックアップ

    初代「エスティマ」室内モックアップ

東京地区におけるデザイン開発体制の強化

東京地区でのデザイン業務は、1982年に、九段ビルに設置された東京技術部デザイン室と、本社からの出張者で対応してきたが、東京独自のテイストを持つデザインの創造、ネットワーク形成に取り組むため、1990年、東京・三田のセンチュリー三田ビル内に、「東京デザインセンター」を開設した。約30人が常駐し、調査企画、外形・室内・カラーデザインなどの業務を担当、またスケールモデルが製作可能な設備を持ち、モデラーも常駐した。

  • 東京デザインセンター

    東京デザインセンター

1996年、東京・八王子にフルサイズクレイモデルが製作可能なモデル棟を建設、「トヨタ東京デザイン研究所」として活動を開始した。1999年、モデル棟に加え、デザイナーの居室、フルサイズのデザインが映像で確認できるプレゼンテーション施設を備えたデザイン棟を増設。アイデアスケッチからフルサイズのクレイモデルまでの製作ならびにその評価検討まで、一連のデザイン開発が可能となった。この増設により、東京デザインセンターの機能を東京デザイン研究所に統合し、東京地区におけるデザイン開発体制の強化・充実を図った。開設以来、主としてモーターショー出品車などの先行開発を中心にデザイン研究を進めていたが、2010年1月1日、各拠点の役割再構築と機能強化のため組織の再編が行われた。それに伴い、本社技術と連携したデザイン先行開発強化のため、八王子の東京デザイン部を先行デザイン部と改称、その役割を明確にした。

  • トヨタ東京デザイン研究所(八王子)

    トヨタ東京デザイン研究所(八王子)

  • トヨタ東京デザイン研究所(デザインスタジオ)

    トヨタ東京デザイン研究所(デザインスタジオ)

  • 先行開発事例 新世代ビークル

    先行開発事例 新世代ビークル

欧州デザイン拠点の設立

トヨタでは、1982年より欧州事務所内に1~2名のデザイナーを駐在させ、欧州におけるデザイン関連情報を幅広く収集してきたが、さらに欧州市場の嗜好・習慣・価値観・トレンドなどの調査、研究を進めるとともに、現地での先行デザイン開発を行なうため、1989年、ベルギー・ブリュッセル市近郊にデザイン拠点「TMME TOYOTA EPOC(通称:EPOC)」を設立した。

  • TMME TOYOTA EPOC

    TMME TOYOTA EPOC

そして、欧州での先行デザイン開発機能の強化を目的とし、1998年11月、南フランス・ニースに会社として独立した欧州デザイン開発拠点「Toyota Europe Design Development(通称:EDスクエア)」を設立した。EDスクエアの設立は欧州に於けるトヨタの生産・販売計画にあわせ、欧州でのデザイン開発機能の一層の強化を目的としたものである。また、欧州での先行デザイン開発機能の強化には優秀人材の獲得が必須であり、デザイナーにとって魅力あるデザイン環境の確保も重要なファクターであった。EDスクエアの稼動と同時に、EPOCの機能はEDスクエアに移転、統合された。

  • ED スクエア(外観)

    ED スクエア(外観)

  • ED スクエア(デザインオフィス)

    ED スクエア(デザインオフィス)

デザインフィロソフィーの策定

トヨタでは、日本独自の価値観・美意識をベースにしながら、トヨタとレクサスが異なるブランドメッセージを持つために、それぞれのデザインフィロソフィーを定め、デザイン表現を追求している。ハイテク製品、ユースカルチャー、ナチュラルなど、世界に認められている現代日本の価値を「j-factor」とし研究を進めてきた。それは表層的な「和風」を標榜するのとは異なる、世界の目を通して創るまったく新しい価値である。それをコーポレートのベースにしながら未来へ向けた飛躍のため、トヨタ、レクサス、それぞれのデザインフィロソフィーを、トヨタは「VIBRANT CLARITY」、レクサスは「L-finesse」と定めた。

①VIBRANT CLARITY

トヨタブランドのデザインフィロソフィー「VIBRANT CLARITY」とは、ワクワクさせる「活気」と、普遍性ある「爽やかな明快さ」の両立を、エモーションと合理性の調和でめざすこと、をいう。

②L‐finesse

レクサスブランドのデザインフィロソフィー「L-finesse」とは、「先進・先端」を意味する「Leading edge」の「L」と、「洗練された深み」を意味する「finesse」で「先鋭―精妙」をめざすこと、をいう。

  • デザインフィロソフィー

    デザインフィロソフィー

本社デザイン本館の完成

2003年3月、「全天候型屋内外一体検討場」「立体視検討場」「撮影スタジオ・映像制作室」「デザインオフィス」などを有す、4階建てデザイン専有ビルが「デザイン本館」として本社技術部地内に完成。

デザイン業務にデジタル活用が進む中、デジタル化関連業務を集約し業務の効率を図るとともに、新型車投入の増加などにより、デザイン審査・検討案件が増える中、効率的な運営を図るべく開閉式の屋根を持つ全天候型新審査・検討場を建設した。

なお同年12月1日に、施設の披露を兼ね、ジャーナリスト、メディアを招いて取材会を実施した。

  • デザイン本館外観

    デザイン本館外観

  • 全天候型検討場(天井閉時)

    全天候型検討場(天井閉時)

  • 全天候型検討場(天井開時)

    全天候型検討場(天井開時)

2代目プリウスグッドデザイン大賞受賞

2003年発売の2代目「プリウス」は(財)日本産業デザイン振興会主催グッドデザイン賞にて最高賞の「グッドデザイン大賞」を受賞。これはトヨタでは初、車としては1994年「ボルボ850」以来である。審査員からの評価コメントは、「新型プリウスは、1997年に世界初の量産ハイブリッド乗用車として発売した初代「プリウス」を一新。さらに進化させた高性能な新世代ハイブリッドシステムにより世界最高レベルとなる低燃費、低エミッションを追求するとともに、走りの魅力を高めている。前モデルに見られた実験車的なイメージが完全に払拭され、エクステリア、インテリアからハイブリッドカーとしての雰囲気が十分に感じられるようになった。」とある。

国内外の市場でも高評価を受け、大賞受賞に相応しい販売実績をあげた。

外形のオリジナルアイデアは競作案として提案した株式会社テクノアートリサーチの案である。

  • 2 代目「プリウス」外形レンダリング

    2 代目「プリウス」外形レンダリング

  • 室内レンダリング

    室内レンダリング

レクサス・ミラノデザインウイーク

戦略に沿った形でデザインフィロソフィーが社外に認知され、ブランドバリューを高めていくには、計画的なデザイン訴求の実践が必要である。レクサスはデザイン戦略展開の一環として、2005年より2009年の5年間、イタリアミラノで開催される世界最大のデザインエキジビション「ミラノデザインウィーク(通称:ミラノサローネ)」において、画家や建築家、プロダクトデザイナーとのコラボレーションによるアートエキジビジョンを行なった。家具メーカーやファッションブランドがブランドの独自性をアピールする様々なイベントを開催するミラノデザインウィークの中でも、新しい試みとして来場者、メディアともに反響を呼んだ。また、回を重ねるごとに社内においてもこの活動の意義についてポジティブに理解されてきたことは今後の活動において大きな意味をもったといえる。

  • 2005/2006/2007 ミラノサローネ

    2005/2006/2007 ミラノサローネ

  • 2008/2009 ミラノサローネ

    2008/2009 ミラノサローネ

このページの先頭へ