4. TQCからTQMへ

(1)TQMへの進化(1995年)

TQMの基本的な考え方

TQMの基本的な考え方

1990年代になると、生産拡大やグローバル化に伴い、組織が大きくなり従業員数も増加するなか、デミング賞実施賞や日本品質管理賞の受賞から20年以上が経過し、TQCの考え方が希薄になってきた。

また、1995年(平成7年)には、海外事業体の従業員数が国内の従業員数を初めて上回り、言葉や文化、生活習慣までも異なる海外の従業員ともTQCの考え方を共有しておくことが必要となった。

折りしもアメリカでは、日本の競争力の源泉であるTQCに欧米的なマネジメント要素も付加したTQM(Total Quality Management)が、大学講座も開設されるなど、定着しつつあった。

そこでトヨタは、1995年に、TQCの考え方の再徹底を柱とし、商品やサービスの質はもちろん、仕事の質やマネジメントの質をも高めることを目的に、これまでのTQCの考え方をTQMとして再整理し、浸透させていくこととした。

具体的には、「企業の盛衰を決めるのは人材」「人間がモノをつくるのだから、人をつくらねば仕事も始まらない」という人を中心に据えた経営の原点に立ち返り、TQMを「人と組織の活力を高める活動」と定義するとともに、「お客様第一」「絶え間無い改善」「全員参加」の3本柱を行動理念として、その実践を支えるツールの充実・強化が図られた。

そのひとつが、職場マネジメントの質の向上を目的として開発されたMAST(Management-quality AdvancementSystem developed by Toyota-group)である。マネジメントが暗黙知でされていてはグローバルに通用しにくく継続性にも問題があることから、「マネジメントすることはどういうことか」を共有できるよう見える化したものであり、1999年からはMASTをプラットフォームとしたマネジャー育成の研修や職場マネジメントの改善活動に取り組んでいる。

(2)G-QCサークル活動の展開(2004年)

QCサークル活動のシンボルマーク

QCサークル活動のシンボルマーク

21世紀に入り、会社を取り巻く環境は、グローバル化の一層の加速やグループ企業再編による結束強化など、急激に変化してきた。そのような中にあって、トヨタのQCサークル活動も、個人の能力向上、明るい職場づくりという本質を変えることなく、時代にあった活動に進化・拡大させていく必要があった。

そこで2004年(平成16年)から、1.サークルのグレードアップ、2.グローバルな全員参加の達成、3.トヨタグループの連携強化、のための活動を開始し、名称もNew QCサークル活動からG‐QCサークル活動(Grade up、Global、Toyota-Groupの3つのGを冠して命名)へと改めた。

なお、2008年に「G‐QCサークル活動の進め方ガイドライン」が制定され、1.原点(Genten)を忘れない楽しさのある活動、2.現地現物(Genchi-genbutsu)をベースとした地道な活動、3.グローバル(Global)に通用するわかりやすい活動、の3つのGとして、意味づけが見直されている。

QCサークル活動のグローバルな実践は、トヨタにおける「モノづくりの理念」を海外事業体で働く従業員にも伝承することであり、「人」を中心とした活動であるTQMがグローバルな価値観として展開されていることを示すものである。

G-QCサークル活動の展開

G-QCサークル活動の展開