研究開発支援

企業価値創造

世界価値に昇華した日本独創

1990年代後半、当時の技術開発競争の2大テーマ「環境」「安全」のうち、環境についてはハイブリッド、安全についてはGOAの導入をきっかけに、トヨタは世界をリードする立場に移行しつつあった頃、技術部ではその次の競争の舞台を模索する必要が唱えられ、2000年に、技術管理部内に専任のDNT(Develop the Next Theme)チームが発足した。

DNTチームでは、豊田綱領に「研究と創造に心を致し常に時流に先んずべし」と記されているように、創造性とそこから生まれる独創性を、トヨタは大切にしなくてはならないこと、その創造性・独創性発揮のためにはトヨタのオリジンである「日本」を立脚点とすることが、欧米メーカーとの差別化に有効であることなどの議論が重ねられ、それらを包括した「世界価値に昇華した日本独創」(以下、「日本独創」)という考え方にまとめられた。トヨタならびにトヨタの大多数のメンバーの出自である「日本」さらには一人ひとりの個性・価値観をスタート地点とし、世界中のさまざまな文化・価値観との交流の中で、それらが共鳴(時には対立)するところから生まれる価値をコアとして、トヨタの独創性を追求しようという考え方である。その根底にある5つのキーコンセプト「間の和なるオプティマイズ・超5感なるうつろい・素と装の匠・マジカルな2重性・遊美心」は、アジア・北米・欧州の主要14都市で行った世界に認められている日本の独創性やその価値の調査などから見出したものである。

『日本独創』5つのキーコンセプト

「日本独創」 5つのコンセプト

「日本独創」は、2002年より技術部内に展開された。展開にあたっては「日本独創説明会」の他、「日本独創ガイドブック」(海外R&D拠点向けに同英語版)を制作・配布した。また、2003年には「トヨタ世界大会」にて世界中の販売会社・生産会社のトップに、「デザイン新棟取材会」にて報道関係者に対して紹介された。さらに、ここから派生した活動として、創造の原点である「人」と「夢」に焦点を当て、心の面から技術部のパワーアップを図る「アクションY」活動が2001年から2003年の間、展開された。

「日本独創」は、モーターショーにおける訴求メッセージ・空間演出・コンセプトカー「i-swing」、2005愛地球博の「i-unit」として具現化されたのをはじめ、その後の研究開発及び後述する企業価値づくりの基軸と位置づけられている。

  • 2003年モーターショー グローバル戦略空間演出

    2003年モーターショー グローバル戦略空間演出

  • i-unit

    i-unit

技術フィロソフィー「Today for TomorrowとZeronize & Maximize」

1990年代~2000年代初頭、地球環境問題・エネルギー問題などの地球的規模の課題への対応が強く求められてきた。一方、技術部の規模の拡大につれて、組織は細分化・複雑化が進み、個人個人の仕事の範囲も細分化され、以前は技術部メンバーの間で自ずと共有されていた「よいクルマ・よい技術」の概念が組織毎・個人毎にバラバラになってきていた。そのような状況の下、「トヨタの技術部を、一人ひとりが創造性を最大限に発揮できる、世界最強の開発集団にする」と宣言、その実現のために諸施策が実施された。その中に、商品・技術開発の拠り所を明確化し共有することで技術部員の気持ちを一つにしようとする取り組みがあった。

具体的には、豊田章一郎名誉会長が副会長を務めたWBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)の主たる目標、Sustainable Development(持続可能な発展)ならびにその重要な要素であるSustainable Mobility実現に向けての、トヨタ技術部の行動原理とビジョンを明文化し社内外に発信した。

行動原理は「お客様・社会のために、将来を見通す先見性を持ち、何をすべきかを考え、今すべきことを実行する」と定義され、スローガンは"Today for Tomorrow"と定められた。ビジョンについてのスローガンは"Zeronize & Maximize"と定められた。これは、環境負荷や交通事故などの自動車の持つネガティブな要素の最小化について終り無き究極の挑戦を続けるのと同時に、爽快な加速感や走りの楽しさに代表される自動車の持つポジティブな要素の最大化にも取り組み、これら相反する二つの目標について妥協の無い高いレベルでの両立を約束するものである。

Today for Tomorrow並びにZeronize & Maximizeは、技術部トップによる講演並びに小冊子「TODAY for TOMORROW」(和文版/英文版)によって国内外の開発拠点のメンバーに展開された。さらに、2004年にスペイン・バルセロナで開催された「世界文化フォーラム (Universal Forum of Cultures)」における講演など多くの対外訴求の場で展開が図られた。

企業価値づくりの方向観「素、静、動、転、和」と新たな関係づくり

日本発の企業ブランド構築に向けて、2005年から、次なる時代のトヨタが持つ、徳とブランド観の探求を始め、次代に向けたトヨタの新企業観として5つの方向観

  • 「素:分相応の存在=1/Xへ
  • 静:心美しく健やかに生きる
  • 動:人が人として出会う
  • 転:変わることをめでる
  • 和:家族愛を育む」

を定め、企業価値づくりのコア概念と位置づけた。

「企業価値」5つの方向観

「企業価値」5つの方向観

この方向観と「日本独創5つの起点」を軸にして、"ものづくり"、"ことづくり"、"ひとづくり"の連鎖・スパイラルアップによる企業価値づくりという新たな概念を構築し、試みている。

企業価値づくりの概念

「企業価値」5つの方向観

“ものづくり”では、2007モーターショーのコンセプトカー(1/X、Rin、i-REAL)を開発・提案。

「i-REAL」はGoodwoodフェスティバル・上海万博などでショーカーとして活躍すると共に、セントレアでの1年にわたる実証実験などを通じて実用化に向けて開発。

“ことづくり”では、日本独創講演会・展示会などによる技術部内展開に加え、「新しい明日を予感させ魅せる」企業イメージ映像の社内外への訴求やショールーム展示およびGoodwoodフェスティバルでのメインディスプレイ企画などを通じて企業メッセージを発信。加えて2009年からはシカゴ、バンコク、ビルバオ、ブカレストに海外リサーチ拠点を設置し、「世界・時代・人間を感じ知る」リサーチ活動、「日本独創」の次代に向けた新しい視座とコンセプトの探求、アイデア創出活動を、社内や海外事業体を巻き込みながら展開。具体的には現地アーティストとのコラボレーションによるファッションイベント、音楽イベント、食イベントやワークショップ、FGIなどにより、国内外のトヨタR&Dエンジニアが世界の先鋭人材との交流を通じて感性を開花する場として活用している。

企業イメージ映像

企業イメージ映像

  • Goodwoodメインディスプレイ(2007年)

    Goodwoodメインディスプレイ(2007年)

  • Goodwoodでのi-REAL展示走行(2008年)

    Goodwoodでのi-REAL展示走行(2008年)

シカゴ1Year Annversary ビルバオ Fitting Room バンコク観覧車制作 ブカレストラボ開会式

“ひとづくり”では、世界の大学、美術館などでの講演会や海外リサーチラボでの活動を通じ、先鋭、有能人材との人的ネットワークを構築・拡大している。また、2010年8月からは、海外研修生(ルーマニア、クロアチア、バングラデッシュ)の受け入れも実施している。

大学などでの講演

また、スタジオジブリの鈴木プロデューサー・宮崎監督とのご縁で技術部内に西ジブリを開設(2009年4月~2010年8月)したことに加え、技術部エンジニアに向けた感性開拓講座の実施により、「感性磨き」、「日本独創」のより深い理解、実践を可能とする活動を展開している。これらにより、"モノづくり"がさらに先鋭化されるというスパイラルが継承されることと考えている。

西ジブリ開所式

西ジブリ開所式

予感と余韻

「予感と余韻」

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