第1節 元町工場の建設とTQCの導入

第6項 会社方針の明文化

全社監査の結果、明らかになった問題点を解決するため、総員参加によるTQCの推進体制をいっそう強化するとともに、会社の経営方針をまとめて明文化し、全社員に周知徹底を図ることとした。こうして、1963(昭和38)年1月、基本方針、長期方針、年度方針からなる「会社方針」を発表した。基本方針は経営の基本をなす考え方を示したもので、次の3項からなっていた。

  1. 1.社内外の総力を結集し、「世界のトヨタ」への発展を期する。
  2. 2.常に「よい品よい考」に徹し、「品質のトヨタ」の声価を高める。
  3. 3.量産体制の確立と低価格を実現し、わが国経済の発展に寄与する。

長期方針は、世界のトヨタに発展するための目標とその達成のための重点方策を示し、年度方針はその年度の目標と重点方策を示したものであった。

一方、これと並行して同年12月に、5カ年の長期経営計画を取りまとめた。これは従来の生産計画、設備計画中心のものに比べて、より利益計画的要素を強く打ち出したものであり、1964年から1968年の5年間にわたる長期経営計画であった。

1962年の第1回全社監査の際に指摘されたもう一つの問題である、部間の連携不足については、各部の業務を「機能」という観点から見直し、新たに機能別の管理体制を確立することとした。これがTQCの第2段階の重点テーマであった。1963年1月には全社の業務を12の機能に分類し、第2回全社監査では各部監査と並行して機能監査を実施した。さらに、同年には、会社方針の重点テーマとして「コロナの円滑なモデルチェンジ」を取り上げ、このテーマを軸に機能別の管理体制を整えていった。

1964年9月、豊田英二副社長を本部長とするQC推進本部を設置し、新製品の企画から設計、生産、販売という一連の流れのなかで、それまでのTQC推進活動を集大成することになった。

そして、機能別に管理の体系図をつくり、機能相互ならびに機能内の業務の流れや関係規定などを検討した。さらに、部、課のレベルでは、体系図に示された業務の流れに沿い、関係各部の業務分掌と照合しながら管理者の管理項目と管理点を明確にし、管理資料の整備を進めていった。

あわせて、1963年8月には、トヨタ自工、トヨタ自販の連携を強化するため、両社間の関連機能を審議し調整する自工・自販合同会議を設けた。これは前年に設けた自工・自販最高政策会議の下部機構で、企画、生産販売、輸出、新製品、宣伝、人事、財務、購買、品質保証の9会議からなっていた。

このページの先頭へ