第1節 世界金融危機

第1項 ハイペースの成長

21世紀に入ると、国内の新車需要は頭打ち傾向が定着するようになった。一方、米国市場では1999(平成11)年から2006年にかけて、1,600万~1,700万台と過去最大規模の需要が持続し、中国やインドなど新興諸国のモータリゼーションも本格的な発展段階を迎えた。こうした市場動向に、1990年代後半から布石を打ってきた海外生産拠点の稼働時期がかみ合い、トヨタの海外生産はかつてないスピードで拡大していった。

2002年に策定した「グローバルビジョン2010」では、2010年代の世界シェアを15%程度とする目安を織り込み、海外生産への取り組みを一段と加速した。その結果、2001~06年にはフランスをはじめ、中国、チェコ、米国などで車両工場が新たに稼働を始めた。

2007年末時点でのトヨタの海外生産拠点(エンジンなどユニット工場を含む)は、27カ国・地域で53事業体を数え、それまでの10年間で1.5倍に増加した。また、日野自動車とダイハツ工業を加えた連結ベースの世界生産台数は、2000年の594万台から、2007年には950万台へと拡大していった。7年間で356万台の増加であり、年平均で約50万台の成長が続いた。トヨタの生産拡大は海外を中心に、年産能力20万台規模の工場を毎年2~3カ所新設するハイペースで進んだことになる。

このように需要地での生産を拡充するという方針を推進した結果、2007年にトヨタ単体の海外生産は約431万台となり、国内生産の約423万台を初めて上回った。

グローバルな生産・販売の増加に伴い、トヨタの連結業績(米国会計基準)は2000年度(2001年3月期)~07年度には一貫して増収増益を記録した。この間、2001年度に営業利益が1兆936億円と初めて1兆円を突破し、2003年度には純利益が日本企業として初めて1兆円の大台に乗った。その後、2005年度に売上高が21兆369億円と20兆円を超え、2006年度には営業利益が2兆円台に到達するなど、業績面でもハイペースな拡大を遂げた。

しかし、右肩上がりの業績が続くなかで外部環境は徐々に悪化し始めていた。2004年半ばから、新興諸国の急成長などによる需要増で、原油や鋼材、樹脂、さらにプラチナなどの貴金属といったエネルギー・素材の価格が高騰していったのである。自動車産業に限らず、製造業は仕入コストが上昇したため、収益が圧迫されるようになった。好業績を続けていたトヨタでも、車種構成でコンパクトカーなどの小型車が増加していったことも加わり、販売台数の増加がそのまま収益増につながらないという傾向が顕著になってきた。

連結決算における原価改善の効果は、素材価格が比較的安定していた2002~03年度には、原価改善活動「CCC21(Construction of Cost Competitiveness 21)」の成果もあって、年間3,000億円レベルに達していた。ところが、連結営業利益が2兆円を突破した2006年度は、原材料費の上昇による影響が2,000億円強に達し、原価改善効果は1,000億円に押し下げられる結果となった。

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