第1節 多様な車種開発と国内販売の拡充

第1項 市場の成熟化と多様化

自動車ニーズの多様化

日本の自動車普及は、欧米諸国に比べると30年から40年ほど遅れてスタートしたが、そのテンポは欧米を凌ぐ勢いで進展した。乗用車については、1966(昭和41)年にいわゆる「マイカー元年」を迎え、その後も高度経済成長と自動車価格の安定を背景に、大衆化が急速に進んだ。1980年には一般家庭の乗用車普及率が57%と半数を超え、マイカー世帯が多数派となった。

マイカー保有の定着により、1980年代初頭から国内新車市場は成熟段階に入る一方、自動車ニーズが多様化していった。若年層ユーザーを中心にした車への価値観の変化、道路整備の進展による使用環境の変化などが、そうした動きを後押しした。女性ユーザーが増大したことも要因の一つで、1981年に運転免許を取得した女性は1,089万人と初めて1,000万人を突破し、同年末には有資格者の女性の4人に1人が免許を保有するに至った。

こうした市場の成熟化・多様化に対応して、自動車メーカーのクルマづくりも転機を迎えた。例えば、女性ドライバーの増加、AT車の普及、省エネ追求としてのFF車の台頭などがあげられる。

1980年の国内登録乗用車に占めるAT車の比率は27%、FF車は21%となり、いずれも5年前の水準から2倍強に拡大した。

一方、生活の豊かさとともに自動車は自己表現の手段にもなり、DOHC(ツインカム)エンジン、ターボチャージャー搭載車など、先進技術を導入した高性能車の人気が高まるようになった。

このページの先頭へ