第8節 ITとの融合、新エネルギーへの挑戦

第4項 福祉面への対応

ユニバーサルデザインを実践

1990年代半ば以降、安全、環境、エネルギー問題への対応とともに、快適性や使用性へのニーズが高まり、「バリアフリー」「ユニバーサルデザイン」といった概念が広まっていった。ユニバーサルデザインは、高齢者を含む幅広いお客様がストレスなく製品を使用できるという観点からのデザインであり、トヨタは1997(平成9)年に発売した「ラウム」で、その考え方を実践した。

ラウムは全長に対するホイールベースの比率を長くとり、全高や着座位置を高くするなど、乗降性の改善や広い視界の確保を図った。このような設計が評価され、1997年度の通商産業省(現・経済産業省)「グッドデザイン賞」の「ユニバーサル・デザイン賞」第1回受賞車に選ばれた。また、同年12月に発売した初代プリウスは、新開発のプラットフォーム(車台)となったため、ユニバーサルデザインを本格的に取り入れ、目の焦点移動が少ない遠視点のセンターメーターなどを採用した。

さらに、2003年発売の2代目ラウムでは、メーターが見やすく乗降性にも優れた斬新な楕円ステアリングを採用するなど、ユニバーサルデザインの思想をいっそう深化させた。また、このときにはトヨタ独自の基準により、2つの指標からなる「ユニバーサルデザイン評価指標」を設定・導入し、カタログに評価結果を掲載するとともに、以降の車両開発にもその内容を反映していった。

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