第6節 国内市場での開発・販売強化

第2項 新ジャンル・ブランドへの挑戦

VVCによる開発強化

国内自動車市場の構造変化が進むなか、トヨタ車は若者や女性層から敬遠されがちであるとの課題が明らかになってきた。携帯電話の普及などライフスタイルが様変わりする社会情勢に、トヨタの商品展開が合致しなくなりつつあった。

1995(平成7)年8月に就任した奥田碩社長は、「第2の創業期」という豊田達郎前社長の情勢認識を引き継ぎ、創業期と同様に何事にも挑戦することや、めまぐるしく変化するお客様の嗜好に合わせて、トヨタも絶えず変化するよう社内に強く要請した。

当時、トヨタの国内販売のシェアは、40%を割り込む状況にあった。奥田社長は就任会見で、「海外展開のスピードアップ」「新規事業の開発・育成」とともに、「商品企画力・技術開発力の抜本的強化」「国内シェアの早期挽回」を重点課題として掲げ、国内市場での劣勢に強い危機感を表明していた。そのなかで、課題であった20代から30代の若者向けの商品・サービスの開発強化策として、1997年8月にバーチャル・ベンチャー・カンパニー(VVC)が発足した。

VVCは、社内から公募した若手メンバーを中心に構成され、新型車の商品企画やスタイリングから、マーケティングに至るまで新手法を取り入れていった。この活動の一環として、1999年8月にはアサヒビール、花王、近畿日本ツーリスト、松下電器産業(現・パナソニック)とともに、若者や女性にライフスタイルを提案する異業種合同のブランド「WiLL」を立ち上げた。

このブランドの基本コンセプトに基づき、VVCが企画・開発を進め、2000年1月に第1弾の「WiLL Vi」を発売した。従来のトヨタ車では考えられない斬新なデザインは、各方面から注目を集めた。さらに、2001年に「WiLL VS」、2002年には「WiLLサイファ(CYPHA)」を投入した。WiLLシリーズの販売実績は、約4万5,000台と多くはなかったものの、VVCの活動が企画・開発部門の意思決定へ与えた影響は大きく、その後の「bB」など、若者向けモデルの開発に生かされることになった。

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