第4節 自動車部組立工場と挙母工場の建設

第7項 車両品質の改良・改善

自動車の不具合が発見された場合、問題点を迅速に改良して設計変更を行い、従来の部品を取り替えなければならない。その際、旧部品の廃棄処分による損失を最小限に抑えるには、部品の在庫や仕掛品は少ないほうが望ましかった。豊田喜一郎が「ジャスト・イン・タイム」を提唱したねらいには、工程間の部品在庫を減少させ、車両品質の改良に要する時間の短縮や、費用負担の軽減を図ることも含まれていた。

刈谷の豊田自動織機製作所内の工場で自動車の改良を行うと、在庫部品の大量廃棄という多大な犠牲を払うことになるだけでなく、改良案が実行されるまでに1年近くもかかった。しかも、改良されたサービス用補給部品は、ほとんど供給できない状態であった。これらの原因は工場の組織(生産システム)が整えられていないことにあると、喜一郎は考えていた。紡織機部品と自動車部品の生産が混在している豊田自動織機製作所内の工場では、紡織機部品の製造が優先され、自動車部品は後回しにならざるを得なかった。

大量の在庫部品を持つことになった理由は、自動車部品は作れるときにまとめて製造する体制をとっていたからである。その結果、改良のために部品の設計を変更すれば、在庫の旧部品が廃棄処分となり、多額の損失が発生した。1また、試作品の製作や製品化に手間取り、設計変更を行った改良案を実施するまでに1年近くもかかった。さらに、設計変更したサービス用補給部品は、1台当たり5~7個を必要とするが、その生産が間に合わず、実質的に供給することはほとんど不可能であった。

喜一郎は、挙母工場が完成すれば、こうした問題は解消され、車両の品質は早急に改善されると期待していたが、結論からいうと、実情はそれに反するものとなった。2

当時、トヨタ車の欠点として、①エンジンのオーバー・ヒート、②フロント・スプリングが弱い、③ディファレンシャル・ギアが破損しやすい、④トランスミッションの異音、⑤ハンドルが重い、⑥バビット・メタルの焼き付き、などの項目が指摘されていた。3喜一郎は、これらの不具合をまとめて改良し、新型車として挙母工場で生産することを意図していたのである。

しかしながら、後述の新型車GB型トラックにも、なお改良すべき課題が残された。トヨタ自工では、部品の内製化への変更、設計変更、材料・製造法の改良などを積み重ねることで、着実に不具合を解消していった。

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