第3節 排出ガス規制への対応

第3項 排出ガス規制の強化

中央公害対策審議会に付属する大気部会自動車公害専門委員会は、1972(昭和47)年8月、「自動車排出ガス許容限度長期設定方策について」と題する中間答申を提出し、自動車排出ガス対策の早急な確立と実施を要請した。そして、1975年度および1976年度における自動車排出ガス許容限度の設定目標として、「マスキー法(1970年大気清浄法)」に準じた以下の数値を掲げた。

1975年度における許容限度設定目標値

  1. 1.CO排出量は1km走行当たり2.1グラム。
  2. 2.HC(炭化水素)排出量(蒸気ガスおよびブローバイガスとして排出されるものは除く)は1km走行当たり0.25グラム。
  3. 3.NOx排出量は1.2グラム。

1976年度におけるNOx排出量の許容限度設定目標値は、1km走行当たり0.25グラム。

環境庁は1972年10月、この中間答申に基づく設定方針を告示し、さらに1973年5月から乗用車メーカー9社を招いて排出ガス対策の現状、将来の技術開発体制などに関する聴聞会を開いた。

この聴聞会でトヨタは、1975年度規制は、触媒装置に制御用付属部品を取り付けることによって技術的な問題は解決していること、触媒装置生産のために新工場を建設中であることなどを述べ、一方、実用化のための試験時間が不十分なことや品質保証上の問題が未解決であることから、排出ガス規制の段階的実施を要請した。

実験室レベルでの目標達成と商品化レベルでの目標達成は峻別されねばならない、商品化のためには妥当な準備期間が必要であるという、排出ガス規制に対するトヨタの考え方を率直に述べたのである。

環境庁は、ひとまず1975年度規制の実施を答申案どおり決定した。10モード1に加えて11モード2の測定方法も設定し、車種別の許容限度、実施時期など具体的細目を決め、1974年1月には1975年度規制を告示した。運輸省もこれを受けて、同月中にこれを公布した。米国では「マスキー法(1970年大気清浄法)」の実施が延期されたため、3日本の排出ガス規制が世界一厳しいものとなった。

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