第4節 自動車部組立工場と挙母工場の建設

第6項 「号口管理」を採用

既述のとおり、「ジャスト・イン・タイム」が定着するには、従業員の意識改革に相当の年月が必要であった。それに代わる生産方式として、刈谷自動車組立工場時代からの号口制度を合理化した、いわゆる「号口管理」制度1が採用された。

号口管理制度とは、製品の一定数量を1口(1グループ)として各口に連番を付し、その号数で製品の生産進行を管理する制度である。仮に、当日最初に完成する製品10個のグループを第1号口と呼ぶとすれば、2番目以降のグループは第2号口、第3号口となり、各号口がどの工程にあるかということがわかる。

刈谷時代の作業はすべて組請負制であり、作業現場の工場ごとに事務所があった。生産の仕掛単位は、各工場の事務所で決められ、分散管理されていたため、号口制度も各工場個別に運用され、全工場に共通する号数ではなかった。

挙母工場は、「ジャスト・イン・タイム」の導入を前提に工程設計され、工場配置そのものが流れ生産に適した構成になっていたので、号口管理制度の運用も合理化することができた。すなわち、刈谷工場のような工場単位の管理ではなく、仕掛単位や各号数を全工程で共通化し、挙母工場全体の統一的な管理方法を採用したのである。例えば、当日に完成する車両10台ずつを第1号口、第2号口・・・とすると、その組立に必要な各部品も10個単位でそれぞれ第1号口、第2号口・・・と呼び、各工程で生産進行を管理した。

この号口管理制度は、最終組立ラインを基準とし、各部品の生産工程を最終組立ラインに合わせて進行することで、全体としての流れ生産を目指したものであった。しかし、統制経済下の不安定な資材供給などにより、必ずしも制度の円滑な運用は期待できず、また生産状況の変動に伴って、号口管理制度自体も変化せざるを得なかった。

戦時下という非常事態のもとで、さまざまな課題を抱えてのスタートではあったが、号口管理制度の基本的な考え方と、「ジャスト・イン・タイム」を想定した工場配置は、のちのトヨタ生産方式確立の基盤になった。

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