次世代環境車などの相次ぐ投入

新興国とともに重点事業分野と位置づけてきた「次世代環境車」についても、提携を含む事業戦略を活発化させていった。

2010(平成22)年5月、米国のEVベンチャーのテスラ・モーターズ(テスラ)社との業務・資本提携が成立し、豊田章男社長と同社のイーロン・マスクCEOがカリフォルニア州で発表した。1この提携により、両社はEVや関連部品の開発、生産システムで協力する一方、トヨタはテスラ社に対して総額5,000万ドルを出資した。そして、同年11月にはロサンゼルスオートショーにテスラ社との共同開発によるトヨタブランドのコンセプトモデル「RAV4EV」を出展し、2012年の米国での市販に向けて開発のスピードを速めていった。

ハイブリッド車(HV)では、2009年5月に投入した3代目プリウスが、日本では発売から1カ月でトヨタでは過去最高となる18万台を受注するなど国内外で好評を得た。2010年11月に東京でメディア向けに開いた「環境技術取材会」ではHVについて、2012年末までにプラグイン・ハイブリッド車(PHV)を含む乗用車系モデルを相次いで投入する計画を公表した。

また、iQをベースにしたEVの試作車も公開し、2012年に日米欧に投入するとともに、米国ではRAV4も発売すると発表した。さらに、燃料電池車(FCV)については、2015年ごろから日米欧の水素供給インフラが整備された地域で市販に踏み切る方針を表明し、次世代環境車での多面的かつ現実的な普及への取り組みを提示した。

2011年5月には、東日本大震災後に日本で発表する初の新モデルとなったプリウスαを発売した。3代目プリウスをベースに広い室内空間を確保し、5人乗りのほか3列シートの7人乗りも開発した。7人乗りにはトヨタのHVでは初となるリチウムイオンバッテリーを採用した。プリウスαも発売後1カ月間の国内受注が5万2,000台に及び、大震災後の販売店などオールトヨタに元気を与える存在となった。

HV専用モデルではないものの、中型のグローバルセダンであるカムリは2011年9月の全面改良を機に、日本向けについては全車HVとなった。これに先立つ8月には、2002年からベストセラーを続ける米国で、生産工場のトヨタ・モーター・マニュファクチャリング・ケンタッキー(TMMK)とロサンゼルス、ニューヨーク、デトロイトの各市を中継で結んだ発表会を開き、大震災後の在庫不足で苦戦が続いていた北米での反転攻勢に打って出た。

2011年11月にはトヨタ初のプラグイン方式となるプリウスPHV(2012年1月発売)を、翌12月には新たなHV専用モデルとして、プリウスよりコンパクトなアクア(海外ではプリウスc)を相次いで発表した。

2011年12月末に発売されたアクアは、小型・軽量・高効率化した最新の1.5Lハイブリッドシステムを搭載し、日本のJC08モードによる燃費が35.4km/Lと、ガソリンエンジン搭載の量産乗用車では世界トップの低燃費を達成した。169万円からとお求めやすい価格で、HVをより身近な存在としたことや、エコカー減税の延長、エコカー補助金の再開などに向けた動きもあり、発売1カ月の受注は10カ月分の販売計画に相当する12万台と、きわめて好調なスタートを切った。アクアは関東自動車工業の岩手工場が生産を担当し、東京で開かれた発表会には、同工場からの中継で服部哲夫社長や生産担当者が、東北の復興に向けた想いも込めたメッセージを寄せた。

一方、トヨタは家庭などの電源から充電もでき、電池切れの心配がなく飛躍的な省燃費が可能なPHVを「HVに次ぐ次世代環境車の柱」と位置づけて開発を進めてきた。本格量産に踏み出したプリウスPHVは、2009年から日米欧を中心に600台強のリース販売を行い、そこから寄せられたお客様の声を反映、①満充電状態でのEV走行距離は26.4km、②充電分を使い切ったあとのHV走行燃費は31.6km/L、③EV走行とHV走行の燃費を複合して算定したプラグイン・ハイブリッド燃費は61.0km/L(いずれもJC08モード)という性能を実現した。当面、日本で年3万5,000台から4万台、グローバルでは6万台規模の販売を目指していく。

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