グローバルトヨタのキープレーヤーへ―タイ

アジア諸国での生産事業は、1997(平成9)年の通貨危機により一時的に打撃を受けたが、それを機にさらなる域内相互補完体制の拡充を図った。2000年代に入ってからは、「IMV(Innovative International Multipurpose Vehicle)プロジェクト」の開始もあって生産拡大が進み、輸出基地としての役割も強化された。

トヨタ・モーター・タイランド(TMT)では、通貨危機直前の1996年に第2工場として乗用車専用のゲートウェイ工場を設置し、コロナの生産を開始した。これに伴い、第1工場のサムロン工場は、商用車の生産にあたることになった。また、同国のユニット工場であるサイアム・トヨタ・マニュファクチャリング(STM)は、同年に鋳物工場を開設し、エンジンの一貫生産に着手した。

TMTのゲートウェイ工場では、初のアジア向け車両であるソルーナの生産準備を進め、1997年初めにまず国内市場へ投入した。しかし、通貨危機の影響を直接的に受け、生産実績は低迷した。通貨危機から脱出した2001年には、カローラの全面改良を実施し、アジアテイスト車のカローラアルティスとして生産を始めた。続いて、2002年にフルモデルチェンジしたカムリと、ソルーナの後継モデルであるヴィオス、2003年にはウィッシュの生産を開始した。その後、2006年に生産能力の増強を図り、ヤリスを生産車種に加えたほか、2008年にはカローラアルティスをフルモデルチェンジした。さらに、2009年にタイ初のハイブリッド車(HV)となるカムリ・ハイブリッド、2010年にはプリウスの生産を開始している。

サムロン工場ではIMVプロジェクトとして、2004年11月から生産に着手したピックアップトラックタイプであるハイラックスVIGOのアジア域内輸出を開始し、2005年には欧州、オセアニアなどへも出荷を始めた。また、同年にはIMVシリーズのSUVであるフォーチュナーを立ち上げ、アジア各国と中近東向けの輸出を始めた。

2007年にはTMTの第3工場として、バンポー工場がハイラックスの生産を開始した。2010年にはタイ・オート・ワークス(TAW)での生産を一旦終了し、TAWが行っていたフォーチュナーの生産はバンポー工場へ移管された。

このように、タイでは、1990年代後半から国内生産、域内外への輸出が順次拡大していった。TMTの生産累計は2004年に200万台、2010年には500万台を達成し、IMVの輸出累計も100万台に達するなど、グローバルトヨタのキープレーヤー拠点へと成長した。

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