第3節 国内市場の急伸長とレクサスの開発

第2項 「お客様第一」の再徹底

CS向上委員会

トヨタに対するお客様の評価は、1980年代の前半は非常に高い水準にあったが、その後、他社の追い上げなどによりトヨタのポジションは相対的に低下し、1980年代後半には他社との差が縮まってきた。例えば、米国市場を参考に見てみると米国JDパワー社による自動車初期品質調査(IQS:Initial Quality Study)1では、1985(昭和60)年の第1位から1987年には第4位と順位を落としていた。一度失った信用はなかなか取り戻せないという危機感から、経営陣の間ではオールトヨタの活動をお客様の立場で見直すべきだという気運が急速に高まった。当時国内経済はバブル期にあたり、販売台数は急激に伸びていたが、量の拡大よりも「お客様第一」の徹底を図るべきだという考え方に基づき、1989(平成元)年1月、オールトヨタのお客さま満足度(CS)向上活動の核となる組織として「CS向上委員会」(委員長=豊田章一郎社長)を発足させた。

この活動を進めるうえで重要な点は、社内や関係先に「お客様第一」の意識をいかにして浸透させ、全社一丸となった活動としていけるかということであった。「お客様第一」はトヨタ創業以来の基本精神ではあるがこれを全社で再確認するため、スローガンやシンボルマークに加え、社長メッセージの社内放送や「トヨタ新聞」のCS特集号発行などさまざまな手段を用い、反復してCS向上に対する意識高揚策を展開した。

また、具体的な取り組みとして、委員会の下に「車両品質分科会」と国内・海外の「販売・サービス分科会」を設置して、車両の設計・生産から販売・サービスまでの各分野でCSへの取り組みを進めた。さらに世界中の販売店や仕入先に協力を呼びかけて、この活動に参画してもらった。その結果、関係先においても同様の委員会やCS担当役員任命など、活動推進の核となる体制ができ、オールトヨタをあげたCS向上活動の連鎖となって「お客様第一」のさらなる浸透、進化につながった。

このページの先頭へ