第2節 交通事故増加への対応

第5項 自動車総合管制技術の研究・開発

1973(昭和48)年1月、通商産業省工業技術院より「大型技術開発プロジェクト1」の一つとして、「自動車総合管制技術2」研究開発計画が発表された。この自動車総合管制技術は、大都市での自動車交通混雑の緩和を試みる大がかりなものであった。個々の自動車に通信機を搭載し、地上との間で双方向・個別通信による会話を行い、個々の車両を最適経路に誘導するなど、いくつかの機能をあわせもった本格的な交通制御システムである。

これは、自動車をベースにして都市交通問題を改善しようという試みであり、トヨタがこのシステムを開発することはメーカーとしての社会的責任を果たすことにつながること、また、カー・エレクトロニクス、コンピューターシステムを中心とするトヨタグループの技術の活用・強化につながることを重視し、開発に応募した。

1973年2月から3月にかけて、トヨタ自工、トヨタ自販、日本電装(現・デンソー)、豊田中央研究所の4社共同で開発提案書を作成し、工業技術院に提案した。その結果、多数の応募のなかから選出され、国立研究所(機械技術研究所、科学警察研究所)、大学および民間企業が共同で開発していくことが決定された。

この研究・開発は、住友電工、日本電気ならびにトヨタが、その中心となるパイロット・システムの設計を担当し、機器の開発は日本電装が中心となって推進した。1975年には小規模実験を行い、1977年10月から東京の目黒区、渋谷区を対象としてパイロット実験を開始した。

このシステムは、中央管制室内にあるコンピューターが道路の交通情報を収集し、個々の自動車に搭載された受信装置に伝え、このシステムからの指示によって、自動車は混雑している道路を避け、空いている道路をスムーズに走ることができるというものであった。このシステムにより対象道路の混雑が緩和される可能性があること、また、投資に対して、それを上回る社会的利益があることなどが検討結果としてまとめられた。3このシステムは、その後の自動車電話をはじめとする移動体通信開発の契機となった。

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