第1節 北米市場でのプレゼンスの高まり

第2項 ラインアップの拡充

北米でのトヨタは、1980年代までカムリ、カローラなどによる中・小型乗用車と、ハイラックスによる小型ピックアップトラックのメーカーというイメージが強かった。しかし、1990年代に入ると相次いで新商品が投入され、そのイメージは大きく変化していった。

第1は、1989(平成元)年にレクサスブランドを立ち上げ、高級乗用車市場へ新規参入したことである。レクサスは、ドイツ車などのライバルを凌ぐ性能と価格競争力、新たに設置したディーラー網が提供する高品質のサービスが相まって、米国のお客様から高い支持を獲得した。2000年に20万4,000台を販売してラグジュアリー部門でトップとなったあと、2007年には32万7,000台まで伸長した。

第2は、1990年代ごろから米国市場で人気が高くなっていたSUV、ミニバン、ピックアップトラックなどの市場へ多くの新商品を投入して本格参入したことである。1996年にクロスオーバーSUVの先駆けとなったRAV4、1997年にミニバンのシエナを投入した。さらに、ビッグスリーの独壇場であった大型ピックアップやフルサイズのSUV市場にも挑戦し、2000年までにピックアップトラックのタンドラ、SUVのセコイアを発売した。このタンドラのほか、タコマやT100は、米国市場向けの専用ピックアップトラックであった。米国におけるトヨタの乗用車とライトトラック1の比率を見ると、ライトトラック比率は1988年の29.9%から2007年には42.6%にまで拡大した。

第3は、2000年に投入したハイブリッド車(HV)のプリウスがトヨタの環境イメージを大きく向上させたことである。HVの分野ではカムリなどの既存モデルをはじめ、レクサスブランド、さらにはSUVでも他社に先駆けて投入し、年間販売台数は2000年の約5,500台から2007年には27万7,000台へと急拡大した。なお、米国でのHVの累計販売台数は、同年に70万台を超えている。

第4は、2003年に若者向けブランド「サイオン(Scion)」を立ち上げたことである。それまでトヨタが得意としなかった「ジェネレーションY世代」(1975~89年に生まれた世代)をターゲットに、Scion.comというサイトを立ち上げ、インターネットを利用した販売を展開するなど、新しい宣伝・販売方法を試みた。最初に投入したxA、xBは順調な売れ行きを示し、2004年にはtCが米国向け専用車として導入された。サイオンの販売台数は発売後4年間で累計50万台に達した。

このように、トヨタは1990年代からカローラ、カムリ、ハイラックスなどコアモデルの充実を図る一方、高級車および若者向けの商品ラインアップの拡大、ライトトラックの拡充、ハイブリッドモデルの積極投入などにより、米国市場でのイメージを変え、存在感を高めていった。

また、北米ではこうした商品ラインアップや販売網の整備・拡充とあわせて、新たな拡販施策も取り入れた。例えば、1991年に新型カムリを投入した際には、初の試みとして「セールストレーニング・プログラム」を展開した。米国トヨタ(TMS)が26のトレーニングチームを全米の販売店に派遣し、ホンダのアコードやフォードのトーラスといった競合車のテストドライブを実施するなど、商品知識の強化を図る施策であった。このプログラムは、1992年の新型カローラ投入時にも横展開された。

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