第2節 創立50周年と円高への対応

第2項 徹底した原価低減活動

全社での取り組み

円高緊急対策の活動は全社的に浸透していった。購買部門は仕入先と一体となった価値分析(VA)・価値工学(VE)活動をいっそう強化し、1986(昭和61)年秋以降は車種別に原価企画活動の徹底を図った。また、同年末には「試験研究費低減活動委員会」を発足させ、試作用と量産用の設備を共用するなどの取り組みを仕入先とともに進めた。さらに、同じ時期には設備予備品や設備材、工具などの資材調達に関する「新資材システム」も稼働させ、手配書や出庫処理などの業務をコンピューター処理化し、手作業だった帳票類の削減につなげて「ペーパーレス50」を達成した。

生産部門でも、資材に関して原価低減活動を強化した。例えば生産設備が故障した際の補充用モーターやポンプなどの設備予備品は各工場で分散在庫していたが、1987年から順次本社での集中在庫に切り替えたことで、大幅な在庫点数・金額の圧縮が実現した。また、生産部門担当の楠兼敬副社長の発案により、各工場でトヨタ生産方式(TPS)の再徹底に力を入れた。TPSの基本である「ムダ」の排除による原価低減に、より高いレベルで取り組むためであった。具体的には、1987年に車両組立全5工場に「TPS推進者制度」を導入し、それまで生産調査室が中心となって推進していたTPSの徹底や教育などの活動を工場サイドが主体的に実施する体制に改めた。TPS推進者は工場長の最も重要な直属スタッフと位置づけられ、同時に各工場のTPS推進者による連絡会も設置し、工場間の改善交流を進めながらTPSの進化や全社推進を図った。

生産技術部門においても、新技術・新工法を開発・導入して工程改善や原価低減に取り組んだ。プレス工程では、部品の一体化や形状の見直しによる部品点数削減と型構造の開発、成形方法の工夫により、例えば5工程を要した加工を4工程に削減することで金型費と工数の削減につなげた。ボデー工程では、1989(平成元)年に開発した省スペース型溶接ロボットにより、1工程に従来の倍の台数のロボット配置を可能とし、増打ち工程のライン長さ半減を実現した。当時すでに普及していたフレキシブル・ボデー・ライン(FBL)にも、この省スペース型ロボットを導入し、溶接工程のさらなる進化と原価低減を達成した。

このページの先頭へ