第3節 品質問題

第1項 品質問題の拡大

公聴会の開催

リコール関連の問題に対する市場の懸念を受けて、2010(平成22)年2月5日に豊田章男社長は名古屋市で緊急の記者会見を行い、一部のお客様に不安を与えていることを陳謝したうえで、豊田社長を委員長とする「グローバル品質特別委員会」を設置して、品質への取り組みの検証や改善、世界の各地域軸の取り組み強化などを柱とした活動をただちに進めていくことを発表した。さらにこの会見から4日後の同月9日には、既述のとおりプリウスなど3車種のABSのブレーキ制御システムに関するリコールに踏み切り、豊田社長が記者発表した。

加えて豊田社長は、同月17日に品質問題への取り組み状況を説明する記者会見を行い、電子スロットルの制御システムについて、何重もの安全対策が織り込まれており、何らかの異常が発生した場合には、出力の制限がかかったりエンジンが停止するよう設計されていると説明した。

一方で、米国では議会でトヨタのリコールと意図せぬ加速に関するクレームへの関心がますます高まり、トヨタのほか運輸当局や事故に遭われた方などの関係者から事情を聴取する公聴会の開催が決まった。トヨタの関係者としては2月23日に米国トヨタ(TMS)のジム・レンツ社長が下院のエネルギー・商業委員会、翌2月24日に豊田社長とトヨタ・モーター・ノース・アメリカ(TMA)の稲葉良睍社長が下院の監督・政府改革委員会の公聴会に出席・証言した。公聴会では各委員から電子スロットルを含むトヨタ車への疑念や厳しい質問や批判が続いたが、豊田社長や各出席者は事実関係やトヨタの対応の考え方について誠意をこめた回答に努めた。

公聴会の終了後、豊田社長は、全米からワシントンに駆けつけていたトヨタ販売店、北米生産事業体やサプライヤー関係者に会い、「公聴会で私は孤独ではなかった。米国そして世界中の仲間たちが私とともにいたからです」と謝辞を述べた。これは、お客様に対するリコール対応に見られるように、お客様からの信頼回復に向けた販売店の誠意のこもった昼夜を分かたぬ努力に対する感謝の気持ちを表した言葉であった。

豊田社長はこののち、米国から直接中国に向かい、3月1日に北京で記者会見を行った。また同月23日にはベルギーのトヨタ・モーター・ヨーロッパ(TME)を訪問して記者会見し、お客様にご心配やご不便をおかけしたと陳謝した。

一方、米国では引き続き3月2日に上院の商業・科学・運輸交通委員会の公聴会に内山田竹志副社長と佐々木眞一副社長およびTMAの稲葉社長が出席し、内山田副社長は「当社の電子スロットル制御に関し、意図せぬ加速は一度も起こっていないと確信している」と証言した。

その約1年後、米国運輸省はトヨタの電子スロットルに関するNHTSAと米国航空宇宙局(NASA)の包括的調査の結果を発表した。調査では、意図せぬ急加速を引き起こすような電子スロットルの欠陥を示す証拠は発見されなかった。米国科学アカデミーは2012年に米運輸省の結論を認めた。


このページの先頭へ