第3節 国内市場の急伸長とレクサスの開発

第3項 九州・北海道・東北への工場進出

県外進出を機とした取り組み

国内の組立工場としては、1979(昭和44)年稼働の田原工場以来となるトヨタ九州の宮田工場は、「人・車・社会環境に対応して永続的な進化・改善を図ることのできる」新発想の組立ラインを導入した。最大の特徴は、グループ単位で担当作業が完了する「自律分散型機能完結ライン」としたことである。すなわち、インストルメントパネルやエンジンルームなどの機能別にメインラインを11に分割したうえで、各ラインでは20人程度をメンバーとするグループが責任を持って工程を担い、後工程には必ず品質を確認して引き渡す仕組みとした。従来の長く1本につながったラインに比べ、不具合件数はおよそ5分の1に減少し、生産性も1割ほど向上した。そして何よりも、ラインで仕事が完結するシステムを採用したことで、グループごとのメンバーが、ものづくりへの情熱や高い責任感をもつようになったのが大きな成果であった。

同時に、自動化についても「人との共存」を重視した。やみくもに自動化率を高めるのではなく、作業の肉体的な負荷を軽減する自動化などに重点を置き、女性や高齢者も意欲をもって働ける環境づくりに留意した。宮田工場の組立ラインは、このような点が評価され、1993年度の大河内記念生産賞を受賞した。同工場のコンセプトは、これ以降に設置される組立ラインに引き継がれた。

その後、トヨタ九州は1997年12月からレクサスRX300の生産を開始し、高級車の主力生産拠点へと発展していった。

なお、九州や北海道への進出に伴い、これらの遠隔地生産拠点に供給する部品物流のため、新たにトラックのみの陸上輸送と比べ、一度に大量の部品が積み替えなく効率よく運べる「陸海複合一貫輸送システム」を考案した。九州向けの場合、豊田市上郷に新設した集荷センターに仕入先からの部品をいったん集め、トレーラートラクター(牽引車)に連結されたトレーラーに積み込んで名古屋港まで運ぶ。そこからトレーラーのみを専用船で博多港に運び、そのトレーラーを宮田工場と博多港を往復するトラクターが効率よく運搬する仕組みとした。

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