TMMRの設立―ロシアへの進出

1998(平成10)年の通貨危機後、力強い経済成長を続けていたロシアでのトヨタ車の販売台数は、販売網の強化などにより、西欧の主要5カ国と肩を並べるレベルとなった。一方、ロシア政府は将来の世界貿易機関(WTO)加盟をにらみ、自国の自動車産業の保護・育成を目的に、完成車関税の引き上げと部品関税の引き下げに踏み切るとの見方が強まっていた。このため、トヨタは「需要地生産」の方針から、ロシアでの現地生産の検討に着手した。

工場の立地にあたっては、物流の利便性、市場への良好なアクセス、豊富な労働人口、政府の前向きな誘致姿勢などを総合的に判断した結果、進出地をサンクトペテルブルグ市に決定した。生産する車種は、競合状況や収益性などからカムリとなった。2005年にはトヨタ・モーター・マニュファクチャリング・ロシア(TMMR)が設立され、2007年12月から生産能力年5万台でカムリの現地生産を開始した。

また、トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・UK(TMUK)では、プリウスが牽引してきたハイブリッド車(HV)需要の高まりに応えるため、2010年からヨーロッパ初のハイブリッド現地生産車として、オーリス・ハイブリッドの生産を開始した。さらに同年には、トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・フランス(TMMF)でも2012年から小型HVの現地生産を行うことを発表している。

こうして、東西冷戦終結と欧州連合(EU)の地理的拡大に伴い、欧州市場が広がりを示すなか、同地域での生産拠点と生産モデルの拡充を着実に進めていった。

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