「T-UP」の設立―中古車事業

中古車市場は、バブル経済期に生じた保有台数の増加を背景に安定的に拡大し、1993(平成5)年には新車市場を上回る規模に成長した。このころから、中古車をお客様から直接買い取るビジネスが急拡大し、その結果、オールトヨタでは新車販売時の下取りや中古車小売の伸び悩みに直面するようになった。このため、1997年の各営業本部制の導入時に、それまでの中古車部を国内業務部に組み入れて中古車室に改組し、オールトヨタの横断的な企画や施策立案を担う体制へと組織を拡充した。

中古車室では、これらの課題に対して、流通整備などの対策を相次いで実行に移していった。例えば、トヨタ・オート・オークション(TAA)を運営するトヨタ中古車販売は、1997年に関東・中部・近畿のオークション会場をネットワークで結び、落札を専門とする沖縄会場を開設した。同時に、トヨタ販売店に限定していた出品を一般事業者にも広げた。さらに、2000年には東北と九州にも会場を新設し、取引台数の拡大を図った。

小売の強化策に関しては、1999年に200台以上を展示できる大規模店舗「カーロッツ」の三好店を現在の愛知県みよし市に開設した。同店舗を第1号としてトライアルを行い、2001年から全国展開に着手した。従来のトヨタ車中心の展示ではなく、他メーカー車も広く扱う「ノントヨタ」をテーマに、新たなお客様の開拓につなげた。また、2000年に中古車の「ロングラン保証」を見直し、トヨタ車以外も対象とするなど、保証内容を大幅に充実させた。

懸案の買い取り業務については、販売店の小売拡大を前提として仕入機能を強化するため、独自のネットワークを展開することとした。買い取りネットワークの名称は、トヨタの信頼感・安心感を訴求し、「Toyota Usedcar Purchase」の頭文字をとって「T-UP」とした。T-UPは、2000年4月から全国展開に踏み出した。

2000年の国内営業「3カ年計画」策定時には、中古車のイメージアップを図るため、ネーミングについても検討し、「U-Car」で統一することに決めた。また、2001年には中古車室をU-Car事業部に組織改正し、中古車を収益力のある「事業」に育てるというスタンスを明確に打ち出した。

1990年代後半は、補給部品事業についても新施策を打ち出した。競争の激しい定期交換部品の市場に対応すべく、1996年にタクティーを設立し、補給部品の第2ブランド「DJ(ドライブ・ジョイ)」を発売した。また、タクティーの運営によるカーショップ「jms(ジェームス)」事業を立ち上げ、全国で店舗展開していった。

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