「もっといいクルマ」にこだわる風土

豊田章男社長が「ブレない軸」として掲げた「もっといいクルマをつくろうよ」を具現化するモデルも登場した。2007(平成19)年にクルマファンの拡大を目的に発足していた「GAZOO Racingプロジェクト」が、iQの「130G」をサーキットから一般道まで楽しめるように「味つけ」(チューニング)した「iQ"GAZOO Racing tuned by MN(通称GRMN)"」であり、2009年11月に100台が限定販売された。

同年10月の東京モーターショーでは、2000年代初頭から開発を進めてきた、トヨタのプレミアムスポーツの頂点に立つレクサスLFAを正式発表し、販売概要を公表した。最高出力560馬力(412kw)のV10型4.8Lエンジンを搭載、車体骨格に剛性と軽量化を両立するカーボン繊維強化樹脂(CFRP)を採用するなどにより、最高時速325kmの性能を確保した。

販売価格は3,750万円(海外では37万5,000ドル)で、世界で500台の限定販売とした。2009年10月から購入希望の受付を始め、限定数を上回る申し込みのなかから2010年春までに購入のお客様を確定した。生産は同年12月から2012年12月までを計画しており、順次、世界各地へ出荷している。

また、「もっといいクルマ」づくりにこだわる風土を醸成するため、車両や技術への新たな社内表彰制度「トヨタアワード」も創設された。初回は2009年度に発売された車両を対象に、社員の投票などによって受賞を決めることとし、2010年4月に投票が行われた。新車販売部門では、豊田社長が選定する「モリゾウ賞」にタクシーや教習車としてロングセラーを続けるクラウンコンフォートとコンフォートが「地味だが社会になくてはならない名脇役の存在」を理由に選ばれた。そのほか、内山田竹志副社長から授与される賞には福祉車両のウェルキャブシリーズが、社員投票ではプリウスとレクサスIS250Cがそれぞれ受賞した。

さらに、オールトヨタの一体感を醸成する取り組みとして、2009年春から「WE LOVE TOYOTA活動」がスタートした。トヨタの事業や製品への関心を高め、オールトヨタでの愛社精神を深めようという活動で、社員による紹介販売への積極的な参画にもつなげた。その一環として、2010年4月には豊田社長も参加して、愛知県蒲郡市で「WE LOVE TOYOTA セミナー」を開催した。同セミナーでは、創意くふう活動やインフォーマル活動などで活躍する社員や役員による「社内プリウスカップ(燃費競争)」、クルマに関するテーマ討議、講演会などが行われた。参加者一人ひとりが、職場の枠を越えたコミュニケーションとチームワークを改めて実感する機会となった。

金融危機を契機に世界の需要構造が変化するなか、トヨタは各地域で市場特性に合致した商品投入を図る「地域中心」の方針を打ち出した。2009年7月にはこの方針に基づくマーケティング機能の強化策が打ち出され、2010年1月に新会社2社が発足した。トヨタの宣伝や国内外の営業支援部門などを母体としたもので、国内マーケティングを手がけるトヨタマーケティングジャパン(TMJ)と、海外各地域のマーケティング活動を支援する統括会社のトヨタ・モーター・セールス&マーケティング(TMSM)である。後者のTMSMにはトヨタが全額出資し、さらにTMSMはTMJやトヨタグループの広告代理店であるデルフィスなど関係会社の持株会社ともなり、関連各社と一体的に事業展開する体制とした。

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