第8節 本格的乗用車トヨペット・クラウンの登場
第3項 本格的乗用車トヨペット・クラウンの開発
トヨペット・マスターRR型の開発
RS型乗用車の開発と並行して、1953(昭和28)年10月には関東自動車工業製RHK型乗用車の後継車として、RR型乗用車の開発が始まった。
RS型乗用車が前輪独立懸架を採用したのに対して、RR型乗用車はRHK型を踏襲したビーム式前輪懸架である。その頑丈な構造から、使用条件が過酷なタクシー業界をターゲットとした。シャシーについては、RHK型乗用車から引き継いだ部品と、RS型乗用車と共用する部品で構成された。
RR型乗用車の開発責任者は主査室の薮田東三主査が務めたが、ボデーの設計は関東自動車工業がそれまでどおり担当した。RS型乗用車は完成車販売とする方針であったことから、関東自動車工業が行っていたRHK型乗用車の架装事業が消滅するため、急遽その後継車としてRR型乗用車を開発することになったのである。
RR型乗用車のシャシーは、トヨタ自工の挙母工場で製造され、そこからボデー架装のため、神奈川県横須賀市の関東自動車工業へ送られた。1954年3月にはRR型試作車の第1号が完成し、同年9月から量産を開始した。
RR型乗用車は、「トヨペット・マスター」と命名され、「トヨペット・クラウン」と同時に、1955年1月7日に発売された。両車種の詳細な仕様をスーパーRH型とともに一覧すると、表1-41のとおりである。
表1-41 クラウンRS型、マスターRR型、スーパーRH型の仕様(1955年)
項目
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クラウンRS型
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マスターRR型
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スーパーRH型
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全長
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4,285mm
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4,275mm
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4,280mm
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全幅
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1,680mm
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1,670mm
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1,590mm
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全高
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1,525mm
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1,550mm
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1,600mm
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ホイール・ベース
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2,530mm
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同左
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2,500mm
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トレッド(前)
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1,326mm
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1,317mm
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1,325mm
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トレッド(後)
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1,370mm
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同左
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1,350mm
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最低地上高
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210mm
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200mm
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190mm
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標準床面地上高
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320mm
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370mm
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410mm
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車両重量
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1,210kg
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同左
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1,150kg
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乗車定員
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6人
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同左
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5人
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最高速度
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100km/h
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同左
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同左
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エンジン型式
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トヨタR型
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同左
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同左
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シリンダー
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直列4気筒
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同左
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同左
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総排気量
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1,453cc
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同左
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同左
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最高出力
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48HP/4,000rpm
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同左
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同左
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最大トルク
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10m・kg/2,400rpm
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同左
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同左
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蓄電池電圧
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12V
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同左
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6V
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クラッチ操作形式
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油圧伝導式
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同左
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リンク式
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トランスミッション
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前進3段、
シンクロメッシュ付 |
同左
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前進4段
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常時噛合いヘリカルギア
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同左
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選択摺動式
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リモート・コントロール
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同左
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ダイレクト・コントロール
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操縦装置歯車
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ウォームおよびセクターローラー式
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同左
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同左
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前輪車軸形式
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ウィシュボーン式独立型
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逆エリオット式Iビーム
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同左
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後輪車軸形式
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半浮動式バンジョー形
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同左
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同左
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ブレーキ形式
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油圧浮動シュー式、
後2輪手動併用 |
同左
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油圧内部拡張式
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前バネ形式
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コイル10巻
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リーフ5枚
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リーフ8枚
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後バネ形式
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リーフ3枚
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リーフ5枚
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リーフ9枚
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フレーム形式
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梯子形閉断面
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梯子形コ断面
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同左
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- (出典)
- トヨタ技術会『技術の友』1955年7月15日
また、関東自動車工業では、トヨペット・マスターRR型のシャシーを改造し、変わり型ボデーを架装した「マスターライン」シリーズを開発した。同シリーズの車種としては、同年9月発売のマスターライン・シングル・ピックアップRR16型、マスターライン・ライトバンRR17型、1956年8月発売のマスターライン・ダブル・ピックアップRR19型があった。
その後、1956年12月にトヨペット・マスターRR型は販売が中止され、関東自動車工業はマスターライン・シリーズを中心に製造することになった。同シリーズは、1959年3月までに3車種合計で約1万9,400台が製造された。
なお、関東自動車工業では、既述のとおり、1957年7月にトヨペット・マスターRR型のボデーを利用し、初代「トヨペット・コロナST10型」を開発している。