第1節 リコール問題への対応

第4項 トヨタ品質管理賞の制定

1965(昭和40)年にトヨタがデミング賞を受賞したことは、既に述べたとおりである。受賞の翌年の1966年に購買管理部を新設して、仕入先まで含めたTQC活動を推進し、デミング賞受賞によって得た知識と経験を関係会社、仕入先にも伝えていった。関係会社については、11社QC連絡会1が中心となり、「すべての会社がデミング賞受賞」を目標として着々とその成果をあげつつあった。

1969年9月、大野修司副社長の発案により、仕入先においてもTQC活動を浸透させるため、トヨタ品質管理賞を新設した。

トヨタ品質管理賞はTQC(Total Quality Control)をToyota Quality Controlと読み替え、TQCの精神をトヨタ流に発展・充実したものにし、オールトヨタとして品質管理をいっそう推進していこうという趣旨で設けたのである。

この賞は、一部上場会社を除いた協豊会、精豊会(のちに栄豊会と統合)のメンバー会社のうち、経営管理の改善という課題についてトップレベルの成果をあげた会社に優秀賞を、また近い将来、経営管理の改善においてトップレベルの成果を期待できる会社に優良賞を贈呈するものである。

当初、優良賞は会社方針、品質保証、生産性の向上の3項目について審査し、優秀賞はこれら3項目に、経営の長期方針を加えた4項目の展開推進状況について審査した。その後、1971年からは両賞とも審査項目に、原価管理と技術開発(専門メーカーのみ)の2項目を追加した。

第1回審査は1970年6月、小島プレス工業を対象に、齋藤尚一副社長を審査委員長として実施し、同年7月以降も引き続きフタバ産業、エム・テー・ピー化成、太平洋工業などが受審し、いずれも同年の優秀賞を受賞した。それぞれ受審活動を通じて品質管理だけでなく経営管理全般が改善された。

リコール問題もあって、仕入先各社の品質保証に対する関心もいっそう真剣なものになっており、また、資本自由化を控えて各社の経営合理化意欲は強く、この制度の発足は各社に大きな刺激をもたらした。

その後、1977年9月、それまでのトヨタ品質管理賞の受賞会社12社の代表者を招き、トヨタ鞍ケ池記念館にて懇談会を開催した。その席上で豊田章一郎副社長は次のとおりあいさつし、トヨタ品質管理賞がトヨタグループの強化に大きく貢献している旨を述べた。

企業の体質改善のためのトヨタ品質管理賞への取組みは、品質保証をはじめ、原価管理、生産性向上、技術開発などの各分野における実質的な成果以外にも、全社一丸となって推進することによって、トップおよび従業員全体の和が高揚されるなど、有形・無形のメリットが現れ、トヨタグループ総力の強化に大きく貢献してくれたように思います。すでに受賞された会社に触発されて、実質的には相当なレベルまで体質改善をされている会社が多いようであります。2

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