第8節 本格的乗用車トヨペット・クラウンの登場

第2項 大型トラック、全輪駆動車、ディーゼル・エンジンの開発

大型エンジンの改良

戦時中から継続して生産されていた大型トラックの4トン積みKC型は、4トン積みBM型に改良され、1947(昭和22)年3月から生産された。

大型トラックに搭載されたB型エンジンは、1938年11月の挙母工場の稼働開始とともに生産が始まった。初めて2トン積みGB型トラックに搭載されたときの最大出力は75HP/3,000rpmで、その後改良が加えられ、1940年1月には78HP/3,000rpmになった。また、1942年に開発された4トン積みKB型トラックや、これを戦時型に簡略化したKC型(1943年)にも78馬力のB型エンジンを搭載した。1947年発売のBM型トラックに搭載されたB型エンジンの出力は82HP/3,000rpmである。

トヨタ自工では、既述のように、1940年9月13日の命令第30号に基づき、戦時中もエンジンの研究試作と、それらを搭載した試作車の製作を行っていた。この命令では、B型エンジンの改良による出力85馬力以上のエンジンの研究が指示され、1944年初めに内径を84.1mmから92mmに拡大して、出力を100馬力に高めたD型エンジンを開発した。

戦後、この研究を基礎に開発を進め、1948年12月にB型エンジンの内径を90mmに拡大したF型エンジンの試作機を完成させた。F型エンジンは、当初ブラジル向けなどの輸出用BM型トラックに限定して搭載されたが、1950年には国内向け車種も追加された。開発当時のF型エンジンとB型エンジンの仕様を比較すると、表1-33のとおりである。

表1-33 F型・B型エンジンの仕様(1950年)

項目
F型
B型
型式
水冷直列6気筒、頭上弁式
水冷直列6気筒、頭上弁式
内径×行程
90.0×101.6mm
84.1×101.6mm
総排気量
3,870cc
3,386cc
圧縮比
6.4
6.4
最高出力
95HP/3,000rpm
82HP/3,000rpm
最大トルク
24.0kg・m/1,600rpm
21.6kg・m/1,600rpm
(出典)
『BM型トヨタトラック』カタログ(1950年)「エンジン仕様書」抜粋

F型エンジンには、戦時中の研究開発の成果として、軽合金製のピストンや改良された潤滑方式などが盛り込まれ、効率のよい出力増加が実現された。その後もB型・F型エンジンについては、機会のあるたびに改良を実施し、性能の向上を図っていった。

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