第7節 グローバリゼーションを支えた各機能

第3項 モノづくりのさらなる改善

デジタル・エンジニアリングの展開

1990年代半ばのITの急速な進展は、自動車の開発や生産分野にも波及し、デジタルデータを駆使した「デジタル・エンジニアリング」の展開を可能とした。トヨタでは、1996(平成8)年に生産技術部門が主体となって「V-Comm(Visual & Virtual Communication)」を開発し、デジタル・エンジニアリングの導入に着手した。

V-Commは、車両設計データや仕入先からの部品データをもとに、新モデルをコンピューターの仮想空間で、3次元の状態で組み立てるシステムである。作業性や部品同士の干渉の有無、品質、見栄えなどが検討できる。従来の試作車による検討に比べ、画面上で問題点を早期に把握できるため、生産準備の期間短縮やコスト削減が可能となった。また、海外など遠隔地の工場とのビジュアルなコミュニケーションが実現し、新車種の世界同時立上げにも寄与した。デジタル・エンジニアリングは、エンジンや変速機といったユニット系にも広がり、こうしたデジタル・ファクトリーへの取り組みは、その後も継続的に進められた。

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