第2節 交通事故増加への対応

第6項 トヨタ自動車に従事する者へ

トヨタは「自動車を通して豊かな社会をつくる」という基本理念に基づき、1970(昭和45)年の年頭に、安全や公害などの問題に対して一段と力を注ぐ決意を表明した。そして、経営の基本姿勢を表す基本方針に「自動車産業の公共性を自覚し、社会の福祉に貢献する」という項目を追加したことは、既に述べたとおりである。

1973年5月、豊田英二社長は、当面する諸情勢に対処する企業、および企業に携わる者としての姿勢について、「トヨタ自動車に従事する者へ」というメッセージを全社の課長以上に配布し、業務の遂行に生かすとともに、部下の一人ひとりにその主旨を徹底することを求めた。

社会から受ける恩恵へ感謝すること、自動車が果たす役割を認識すること、誇りと自信を持ち社会的責任を果たす最善の努力を尽くすことなど、4項目からなる社長メッセージは、以下のとおりであった。

トヨタ自動車に従事する者へ

  1. 1.いかなる大企業といえども、社会の好意ある支援がなければ、発展はおろか、存立すらも危うくなる。トヨタ自動車が今日のように、日本有数の大企業に発展することができたのは、みなさんのたゆまぬ努力によるものであると同時に、社会環境の恩恵のたまものであって、われわれはこのことを感謝し、片時といえども忘れてはならない。
  2. 2.今や、われわれはその行動によって、社会に大きな影響を及ぼすような大企業になっている。われわれの行動は、よきにつけ悪しきにつけ、社会の注目するところであり、それからのがれることはできない。このことをよくわきまえ、われわれの行動を通じて社会に責任をもたなければならない。
  3. 3.自動車が社会に果たしつつある役割、今後果たすであろう役割を十分認識し、その自動車をつくって社会に提供するわれわれの仕事に、誇りと自信を持つとともに、社会の要望に適合したものが提供できるよう、最善の努力をはらわなければならない。
  4. 4.今や、社会環境は変わりつつある。われわれは謙虚にこれを受けとめ、十分これに対応できる体質を備えた企業であり、また、企業にたずさわる者であらねばならない。

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