第1節 多様な車種開発と国内販売の拡充

第2項 新技術とR&D拠点の充実

「レーザー(LASRE)」エンジンの開発

1980年代の前半期は、排ガス対策と省燃費対応という1970年代の試練を乗り越えたトヨタの技術・商品開発力が一気に開花した。エンジンは、1980(昭和55)年当時、日産自動車などによるターボチャージャー搭載タイプが人気を得て、トヨタ車は出遅れ感が否めなかった。しかし、1970年代末に着手していた小型軽量、高性能、低燃費などを追求した新エンジンの開発・投入により、DOHC(ツインカム)を主体とするトヨタの技術が高く評価されるようになった。

エンジンの小型軽量化は、各部の限界設計をいかに行うかがポイントになる。そのため、技術陣は構成部品のすべてを見直し、カムシャフトなど運動部分の軽量化やエンジンブロックの薄肉化などを徹底した。エンジンが軽量化されたことでボデー側の負担が軽くなり、アクセルレスポンスの向上と燃費の低減が実現した。新エンジンシリーズの第1弾は、6気筒の1G-EU型(1,998cc、125馬力)で、1980年3月発表の新型車クレスタに搭載された。

次いで1981年7月には4気筒の1S-U型(1,832cc、100馬力)を、モデルチェンジしたセリカに搭載した。同エンジンは、レーザーホログラフィーを利用した新しい振動対策を施したほか、軽量化のための焼結中空カムシャフトや焼結鍛造コンロッドなど最新の生産技術も駆使した。

これら一連の新エンジンを「レーザー(LASRE:Light-weight Advanced Super Response Engine)」と総称して、高性能、低燃費、軽量コンパクト、高い応答性はもとより、優れた耐久性、低振動、低騒音、メンテナンスフリーを目指すトヨタの姿勢を示した。

トヨタ自工の広報部とトヨタ自販の販売拡張部は、こうした新技術に取り組むトヨタの姿勢をアピールする企画を立案した。新型セリカの発売を機とした「それはエンジンからはじまった」のキャッチコピーによる「レーザー・キャンペーン」の展開である。エンジンを前面に出したキャンペーンは、自動車業界でも前例のない取組みであり、トヨタの技術イメージ向上に大きく寄与した。

レーザー・シリーズは、1982年8月にマークⅡなどに搭載した1気筒当たり4バルブの「レーザーα1Gツインカム24」(1G-GEU型、1,988cc、160馬力)をはじめ、その後も相次いで新型が開発された。

一方で高級車にとどまらず、量販型のエンジンも低コストで、多バルブ化による高出力と低燃費性能を追求し、「ハイメカツインカム」として順次市場投入した。1本のカムシャフトからシザーズギアと呼ぶ歯車を介して、もう1本のカムシャフトを駆動するタイプのエンジンである。最初のエンジンは3S-FE型(1,998cc、120馬力)で、1986年8月発売の新型ビスタ、カムリに搭載された。

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