第1節 多様な車種開発と国内販売の拡充

第1項 市場の成熟化と多様化

多彩な車種を投入

1981(昭和56)年2月、トヨタは当時の先進技術を結集した最高級スペシャリティカー「ソアラ」を発売した。開発にあたっては、高性能・低燃費エンジンの開発や空力特性を追求したデザイン、最新エレクトロニクス技術の採用などに力点を置いた。なかでも5M-GEU型エンジン(2,759cc、170馬力)には、多年にわたるツインカムエンジン研究の成果が織り込まれた。さらに、国内では初めて計器盤から針をなくしたエレクトロニック・ディスプレイメーターやマイコン式オートエアコンなど、多くの画期的な新装備を採用した。ソアラはその完成度の高さが評価され、1981~82年の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。なお、1981年7月にはセリカ、セリカXXのモデルチェンジを行った。

工販合併で新生トヨタが発足した1982年も新モデル攻勢をかけ、3月にFFセダンのビスタ、カムリ、RV分野では4輪駆動のスプリンター・カリブを新たに投入した。そのほか、トヨタ初のFF乗用車として1978年に発売したターセル、コルサをモデルチェンジするとともに、カローラⅡを加えた。

その後も魅力ある商品を続々と投入し、トヨタ車はニーズの多様化や個性化などにスピーディに対応していった。1983年にはカローラ、スプリンターのセダンをFF化し、クラストップの低燃費を達成した新開発エンジン3A-LU型(1,452cc、83馬力)をバリエーションの一つに設定した。同エンジンは、スワール・コントロール・バルブ(SCV)付ヘリカルポート1の採用による希薄燃焼エンジンである。出力向上と低燃費の両立を実現し、FFカローラの躍進に大きく貢献したこの技術は、1987年に発明協会の恩賜発明賞を受賞した。

1984年にはエンジンをミッドシップ配置にしたスポーティパーソナルカー「MR2」を発売し、同年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。また、「白いマークⅡ」として、「ハイソカーブーム」を巻き起こした5代目マークⅡも、この年に登場している。翌1985年には4ドアハードトップのロングセラーに成長するカリーナEDを発売した。さらに、スーパーチャージャー付ツインカムエンジンがクラウンに、ツインターボ付ツインカムエンジンがマークⅡとチェイサーにそれぞれ搭載された。

国内販売の拡大は、1982年の工販合併に伴うマージン改定などの施策により販売店が活性化したことも影響していた。これらの結果、1983年に国内登録車市場でのトヨタ車のシェアは9年ぶりに40%台を回復し、1984~85年には過去最高を更新するなど、国内トップの座を揺るぎないものとしていった。

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