第1節 北米市場でのプレゼンスの高まり

第4項 現地化の進展

マネジメントの現地化

北米での現地生産の拡大に伴い、トヨタは1990年代後半以降、現地法人の活動を統括管理するための体制整備に努め、経営の現地化を積極的に推進した。あわせて、北米全域での渉外広報活動の強化にも取り組んだ。

1996(平成8)年、北米製造事業の統括会社としてトヨタ・モーター・マニュファクチャリング・ノース・アメリカ(TMMNA)をケンタッキー州アーランガーに設立した。新会社設立の目的は、それまで日本でコントロールしていた生産準備や調達・生産・物流にかかわる生産事業全般のマネジメントを現地化することであった。1993年には、トヨタの北米販売に占める現地生産車の比率は45%に及び、現地での部品調達額も50億ドル規模に達するなど、車両・部品の商流は北米に大きくシフトしていた。

その後、2006年にTMMNAは研究開発部門のトヨタ・テクニカル・センター(TTC)を統合し、新たにトヨタ・モーター・エンジニアリング・アンド・マニュファクチャリング・ノース・アメリカ(TEMA)に改組された。TEMAは研究開発や生産準備をはじめ、生産技術や調達などとの機能連携を強化し、北米事業での意思決定の迅速化や各拠点間の人材交流の活発化を推進する役割を担った。

一方、1996年には製販持株会社のトヨタ・モーター・ノース・アメリカ(TMA)を設立した。TMAは、その後2000年に調査・宣伝などの事業を行っていたトヨタ・モーター・コーポレート・サービス・オブ・ノース・アメリカ(TMCS)を統合すると同時に渉外を担当し、米国トヨタ(TMS)のワシントン事務所の移管を受け、渉外・調査機能の強化を図った。

経営の現地化推進に関しては、1990年代後半から北米子会社トップへの現地人材の登用を本格的に開始した。トヨタの海外子会社で初めて現地人トップが誕生したのはカナダでアルミホイール製造を行うカナディアン・オートパーツ・トヨタ(CAPTIN)である。1998年、同社社長にゲイリー・スモーレンバーグ、2001年にはトヨタ・モーター・マニュファクチャリング・ケンタッキー(TMMK)社長に、フォード・モーター出身で、ニュー・ユナイテッド・モーター・マニュファクチャリング(NUMMI)の発足メンバーでもあったゲーリー・コンビスの両氏がそれぞれ就任した。

また、2002年にはトヨタ・モーター・マニュファクチャリング・カナダ(TMMC)の社長としてレイ・タンゲイ、2004年には、トヨタ・モーター・クレジット・コーポレーション(TMCC)の社長兼最高経営責任者としてジョージ・ボーストの両氏が就任し、カナダおよび米国で経営体制の現地化を進めた。

販売部門でも現地人トップの登用を進め、2005年にはTMSでジェームス・プレス社長が誕生し、プレス社長はその後、2006年に米国人として初めてTMAの社長に抜擢された。

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