第8節 ITとの融合、新エネルギーへの挑戦

第3項 ITSへの取り組み

ITSへの本格対応

1990年代初頭、交通事故や渋滞、さらに環境問題への対処という社会的要請とエレクトロニクス技術の急速な進歩を背景に、高度道路交通システム(ITS)という概念が生まれた。ITSは、世界的規模で推進機運が高まり、米国では1990(平成2)年に「ITS America」が、欧州では1992年に「ERICO」が推進団体として発足した。1994年にはパリで第1回の「ITS世界会議」が開催され、以後、欧州、米州、アジアの持ち回りで、毎年世界会議が開かれている。

日本では、1994年1月に当時の通商産業省、運輸省、郵政省、建設省、警察庁の5省庁による支援のもと、「VERTIS」(道路・交通・車両インテリジェント化推進協議会。2001年に「ITS Japan」に名称変更)が設立された。同会の会長にはトヨタの豊田章一郎会長が就任した。その後、1995年に関係5省庁による推進ガイドライン、1996年にはマスタープランとして「ITS全体構想」が策定され、官民による取り組みが本格化した。

トヨタでは、1995年にITS企画グループを設置して推進体制などを検討し、1996年3月に企画、技術、渉外の3グループからなるITS企画部を新設した。以来、関係省庁や団体と連携しながら、ITSの主要なシステムであるカーナビゲーションの高度化や、道路交通情報通信システム(VICS)、自動料金支払いシステム(ETC)、緊急通報サービス(HELPNET)の実用化などに貢献してきた。

1999年7月には都市部の渋滞緩和策として、小型電動車両の共同利用に関する社内運用プロジェクト「Crayon」の実証試験に着手した。実証試験を始めるにあたり、自社開発の2人乗りEVコミューター「e-com」50台を社内13カ所のデポ(専用駐車場)に配置し、ITを活用した予約管理や運行管理システムを導入した。また、同年からは豊田市や京都市などで、トヨタが提供したe-comを使っての社会実験も加わった。豊田市の実験とCrayonの実証試験は、2006年3月まで実施された。

一方、トヨタグループでは、中距離・中量輸送用の次世代交通システムとして、「IMTS(Intelligent Multi-mode Transit System)」を開発した。通信システムと道路に埋め込んだ磁気レーンマーカーを組み合わせることで、専用道では非連結で隊列自動走行ができ、一般道では手動運転する交通システムである。2001年に兵庫県のテーマパークに導入されたのに続き、2005年の「愛・地球博」では会場内の移動手段として採用された。

なお、2004年に11回目を迎えたITS世界会議は名古屋市の「ポートメッセなごや」が会場となり、「夢いっぱい ITS未来博」が併催された。トヨタと日野自動車、ダイハツ工業は、この博覧会に共同ブースを出展し、幅広いITSへの取り組みを紹介した。

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