第2節 環境・安全問題への対応

第4項 車両安全への取り組み

ABSとエアバッグを標準装備

1980年代後半の新車市場の拡大などを背景に、1988(昭和63)年の交通事故死亡者数は13年ぶりに1万人を突破し、翌1989(平成元)年には非常事態宣言が発令された。このため、自動車業界は安全対策への対応が急務となり、日本自動車工業会では、同年に「交通安全特別委員会」を設置した。

当時、自動車の安全技術はエレクトロニクスの進化により、予防安全技術では4輪ABS(Anti-lock Brake System)、衝突安全技術ではSRS(Supplemental Restraint System)エアバッグシステムの普及が始まるなど、転機を迎えていた。

ABSは、滑りやすい路面での制動時に車両の安定性を確保する技術である。トヨタ車では、1971年にリアブレーキを制御する2輪ESC(Electronic Skid Control)の名称で、初めてクラウンに採用し、順次上級車種に展開していった。4輪ABSは、1983年にクラウンに初搭載し車種拡大を進めていたが、1990年中に乗用車全車種への展開を図った。

このABSをベースに、さらに高度な車両制御システムとして開発されたのが車両安定制御システムの「VSC」(Vehicle Stability Control)1である。東富士研究所近くの自衛隊演習場を走っている戦車の動きにヒントを得て、開発に着手した。トヨタでは、1995年にマジェスタI-FOURに初搭載し、順次採用車種を拡大していった。

一方、シートベルトの補助拘束装置としてのエアバッグは、1989年8月にクラウン(運転席のみ)に初めてオプション設定し、同年10月発売の初代セルシオ(同)では標準装備とした。その後、セリカやカリーナEDなど搭載車種を拡大し、2年間で全車種への展開を完了した。

エアバッグは運転席のみから助手席への普及も進み、トヨタは1992年にセルシオに標準装備したあと、順次採用車種を増やした。運転席、助手席への装着が行き渡ると、1998年には初代プログレに、世界初となる側面衝突時の乗員頭部への衝撃を緩和するカーテンシールドエアバッグを採用している。さらに2002年からは、膝を拘束して保護するニーエアバッグの装着をカルディナから始めた。

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