第7節 グローバリゼーションを支えた各機能

第5項 管理部門でのグローバル対応

ステークホルダー重視の連結経営へ

1999(平成11)年9月、トヨタはニューヨークおよびロンドン証券取引所に株式を上場した。海外での資金調達や、トヨタの知名度・ブランドイメージの向上を第一義に、経営の透明性を高めることや収益力の強化、さらに投資の効率化など、株式市場に向かい合った経営を追求するためのモチベーションと位置づけた。

一方、米国で大手企業による大規模な会計粉飾が次々と発覚したことを受け、2002年7月に「米国企業改革法」(SOX法)が制定され、トヨタも2006年4月からその適用を受けることとなった。これに対応すべく、2005年1月に経理部監査グループを母体に副社長直轄の独立的な組織としてグローバル監査室を創設し、連結財務報告にかかわる内部統制の有効性確保のための評価・改善への取り組みを始めた。

1999年度からはいわゆる「会計ビッグバン」が始まり、ニューヨークなど海外2市場への上場は、そうした点からも時宜を得ていた。会計ビッグバンは、税効果会計などの導入により、日本の会計基準を国際的な基準に近づけることを目的としたものである。トヨタはその一環として、業績の内容をグローバルにとらえて開示するため、2000年3月期から連結決算を中心とした公表を開始した。

また、2000年には株式の売買単位を1,000株から100株へと引き下げた。当時、不良債権の処理を迫られた金融機関が、事業会社などの保有株式の売却を進めており、株式の持ち合い解消が加速していた。海外証券取引所への上場や売買単位の引き下げは、持ち合い解消による安定株主の喪失に対処し、個人株主の拡大を図るための方策でもあった。

同時に、安定した配当など株主への利益還元も、重要な経営方針に位置づけた。その方策の一つとして、資本効率の向上につながる自己株式の取得に力点を置き、2002年度には日本企業で過去最大規模の年間6,000億円の取得枠を設定した。配当についても、2005年度から中長期的に連結配当性向を30%に高める方針を公表し、リーマン・ショックに見舞われる直前の2007年度まで着実に増配を進めた。

こうしたステークホルダー重視の連結経営を推進するにあたって、2003年から向こう5年間の経営計画を世界規模で策定する「グローバルマスタープラン」を導入した。同プランは、商品・事業計画、利益計画、経営資源投入計画などとともに、経営や収益確保のための課題などを明確にしたもので、隔年で5年先までの計画が策定された。さらに、2005年度からはグローバルマスタープランに基づき、年度別の利益目標などを達成するための仕組みとして、「グローバル・プロフィット・マネジメント」(GPM)を導入した。これにより、トヨタ本体の各機能と海外事業体が一体となり、収益改善活動を推進する体制を整えた。

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