第8節 ITとの融合、新エネルギーへの挑戦

第2項 エネルギー問題への対応

電気自動車、燃料電池車の開発

1990年代になると地球環境問題と並んで、将来の石油資源のひっ迫・枯渇といったエネルギー問題への備えも、自動車産業の重要な課題となってきた。トヨタでは、1992(平成4)年にEV開発部を設置し、電気自動車(EV)や水素を燃料とする燃料電池車(FCV)の本格開発に着手した。1990年には米国のカリフォルニア州で、1998年から販売台数の2%を排出ガスゼロの車両とすることを義務づける「ZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)法」が成立するなど、EVを研究段階から実用化のための開発へと加速させていく必要が生じていた。

EVの開発は、コストを抑制するねらいから、RAV4の改造車で対応した。当初はメンテナンスフリーの密閉型鉛電池と、開発されたばかりのニッケル水素電池の2方式を採用し、日米でのモニター調査に取り組んだ。その結果、鉛電池では1充電当たりの走行距離が短いため、実用化は難しいと判断し、1996年にニッケル水素電池を搭載したRAV4EVをまず日本で、翌1997年には米国で発売した。

RAV4EVは、2003年までの8年間で約1,900台の販売実績をあげた。そのうち約1,500台は米国向けであり、1998年にはカリフォルニア州のZEVに関するプログラムで割り当てられた約320台の販売を達成した。

水素から発生させる電気をエネルギー源とするFCVについては、1996年に水素吸蔵合金ユニットを搭載したFCEV-1を開発した。続いて、1997年にはメタノールから水素を取り出す改質器を搭載したFCEV-2へと、開発ステップを踏んでいった。その後、2001年には2次電池を搭載し、ハイブリッド車(HV)プリウスで培った制御技術を採用したFCHV-3とFCHV-4を開発し、試験を行った。FCHV-4では水素を高圧タンクに充てんする方式を採用した。2002年12月には自社開発の燃料電池「トヨタFCスタック」を搭載したトヨタFCHVを日米で限定販売し、実用化への第一歩を踏み出した。

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