EA型小型乗用車の試作

1936(昭和11)年、東京帝大工学部助教授の隈部一雄がドイツで購入した小型乗用車DKW(前輪駆動車)が、芝浦の研究所に届けられた。豊田自動織機製作所自動車部では、この車を分解・スケッチして、図面を作成することとし、豊田英二がエンジンを、池永羆が足まわりやその他を担当した。そして、1937年6月ごろから刈谷の自動車組立工場の一角で、EA型小型乗用車として試作に取りかかった。

その後、組立工場が挙母工場へ移転したのに伴い、試作車は刈谷工場にしばらく放置されていたが、1940年に刈谷工場の電装工場でエンジン、シャシーを製作することになった。ボデーについては、同じく刈谷の車体工場木工場で木製のものが製作され、EA型小型乗用車10台の試作車が完成した。

また、東京芝浦工場では、EA型をリアエンジン・リアドライブ(RR)方式に改造したEB型小型乗用車を開発し、刈谷の電装工場では、EA型のシャシーを利用したEC型電気自動車の試作を行った。EA型小型乗用車の仕様は、表1-9のとおりである。

表1-9 E型エンジンとEA型小型乗用車の仕様(1940年)

項目
内容
エンジン
型式
2ストローク、2気筒
ボア
74mm
ストローク
68mm
排気量
584cc
最高出力
18HP/3,200r.p.m.
ホイール・ベース
2,610mm
全長
3,220mm
全幅
1,300mm
車両重量
650kg
(出典)
「トヨタ自動車製造計画車両一覧表」(当社内文書)

なお、小型乗用車の製造は、1938年8月4日の商工省通達により禁止されていたため、これらの開発は試作段階で終わった。1

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