第5節 戦時下の研究と生産
第8項 各種自動車の試作
AE型中型乗用車「新日本号」の試作
中型エンジンC型の試作は、1937(昭和12)年5月から開始され、1939年3月に完成した(表1-10)。6気筒のB型エンジンをベースに、4気筒エンジンを開発したもので、ボア・ストロークと圧縮比はB型とまったく同じであり、排気量はB型(3,389cc)の3分の2に相当する2,258ccであった。シリンダーヘッドやシリンダーブロック、クランクシャフトなどは、B型エンジンの製造設備を流用して加工され、そのほかの部品も多くが流用された。
表1-10 C型エンジンとAE型中型乗用車の仕様(1940年)
項目
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内容
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エンジン
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型式
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水冷4気筒、OHV
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ボア
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84.1mm
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ストローク
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101.6mm
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排気量
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2,258cc
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圧縮比
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6.4:1
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最高出力
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50HP/2,800r.p.m
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ホイール・ベース
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2,500mm
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全長
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4,500mm
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全幅
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1,730mm
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全高
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1,635mm
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車両重量
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1,220kg
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- (出典)
- 「トヨタ自動車製造計画車両一覧表」(当社内文書)
この間、商工省は燃料の節約を目的に、1938年3月にAA型乗用車よりも小さな排気量(2,400cc程度)の中型車の開発を要請した。トヨタ自工では、C型エンジンを開発中であったところから、1938年7月に同エンジンを搭載した中型乗用車の製作に着手することとし、1939年9月に試作車を完成させた。このAE型中型乗用車の試作車は、自動車技術委員会で発表され、総距離1,500kmに及ぶ運行試験で優秀な成績を収めた。
AE型中型乗用車は、1939年11月1日から実施された公募により、「新日本号」と名づけられた。1翌1940年1月18日には販売店の幹部を挙母工場に招待し、「新日本号」の発表・試乗会を開催した。
当時は乗用車の生産が厳しく制限されていたことから、AE型中型乗用車の生産台数は76台にとどまった。また、同年5月には鋼板を節約するため、木製ボデーを架装したBA型を開発し、17台を生産した。中型乗用車AE型の仕様は、表1-10のとおりである。