第7節 グローバリゼーションを支えた各機能

第4項 人材育成

「トヨタウェイ」の編纂

1990年代後半からの急速なグローバル展開により、トヨタの連結従業員数は、1999(平成11)年度に20万人を突破し、2007年度には30万人を超えた。これに対し、1999年度のトヨタ単体での従業員数は約6万5,000人と、バブル崩壊後の採用抑制などによる減少傾向がようやく止まる段階にあった。こうした海外従業員数の急増に対して、グローバルで共通な人事管理の整備が急務となった。

とりわけ、人材の多様化に伴って、トヨタのコアとなる経営価値観や行動規範を共有し、経営を委ねることができる海外人材を体系的に育成する必要性が高まっていた。そこで、1998年10月にBRグローバル人事室内に、「The Toyota Way編纂プロジェクト」の事務局を設置し、「トヨタウェイ」の編纂に着手した。トヨタウェイとは、「暗黙知」として受け継がれてきた経営上の信念や価値観を目に見える形で、体系的に理解できるようにしたものである。

同プロジェクトでは、「豊田綱領」や「トヨタ基本理念」などから先人・先達の信念や価値観を抽出し、経営首脳と幾度も検討を重ねながら、2001年4月に「トヨタウェイ2001(The Toyota Way 2001)」として取りまとめた。その内容は、「知恵と改善」「人間性尊重」という2つのテーマを柱に、「チャレンジ」「改善」「現地現物」「リスペクト(尊重)」「チームワーク」の5つのキーワードで構成され、英文版も含む冊子として内外の事業体に配布した。

トヨタウェイの策定を主導した張富士夫社長は、その冊子の冒頭で、トヨタウェイは「トヨタに働くわれわれの行動原則となるもの」としたうえで、「皆さんには、常に『それはトヨタウェイか?』を問う姿勢」をもつよう呼びかけた。また、トヨタウェイは固定化するものでなく、「進化・発展させていく」べきものとの位置づけから正式名称に「2001」を付加し、社員の間で将来の姿を積極的に議論することを求めた。

トヨタウェイは、機能別にブレークダウンされ、各部門でも展開された。2001年10月には販売部門が「販売のトヨタウェイ」を冊子として作成した。トヨタ販売方式の哲学を世界の現場レベルで共有し、普及・浸透させることが目的であった。また、2002年には米国のカリフォルニア州に販売教育の専任機関であるグローバル・ナレッジ・センター(GKC)を開設し、「販売のトヨタウェイ」普及のためのグローバル拠点として活動を開始した。

そのほか、2002年10月には経理本部が「経理・財務トヨタウェイ」を発行した。これにより、経理部門が担う「経営の羅針盤」としての使命や、「収益確保の推進」「経営実態の正しい把握と開示」などの役割が明示された。業務遂行の基盤として、新入社員はもとより中途採用者や異動者の導入教育などにも積極的に活用されている。

上記のほかにも「人事労務トヨタウェイ」「調達のトヨタウェイ」「技術のトヨタウェイ」など、主要各機能がそれぞれの機能別トヨタウェイを作成している。

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