第4節 自動車部組立工場と挙母工場の建設
第8項 B型エンジン、GB型トラックの開発
GA型トラックがある程度使用に耐えられるまで改良された1937(昭和12)年10月ごろ、自動車の改良を思い切って中止し、挙母工場の建設に全力を傾けた。そして、挙母工場の完成に伴い、エンジン、車種を一新した。
A型エンジン開発の際に手本にしたシボレー車のエンジンも、その後改良が施され、出力が増加していたところから、トヨタ車でも新型エンジンの開発に取りかかった。A型エンジンの設計では、サービス部品を使えるように、シボレー・エンジンとの部品互換性を確保するため、インチ単位を採用した。このころになると挙母工場の建設計画も決まり、サービス部品の供給不安も解消されたので、新型エンジンはトヨタ車専用部品の使用を前提に、メートル単位によって設計することになった。
1937年5月ごろから新型エンジンの設計に着手し、同年10月ごろには設計が完了した。この新型エンジンは、B型エンジンの名称で試作が開始され、1938年11月の挙母工場完成とともに12月から本格生産を始めた。B型エンジンの主な仕様と改良点は、表1-6のとおりである。
表1-6 B型エンジン(1939年)の仕様比較(対A型エンジン)
項目
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B型エンジン
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A型エンジン
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型式
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→
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直列6気筒、頭頂弁(OHV)式
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直径(口径、ボア)
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84.14mm
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3インチ5/16(84.14mm)
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衝程(行程、ストローク)
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101.6mm
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4インチ(101.6mm)
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気筒容積(排気量)
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3389cc
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206.8立方インチ(3389cc)
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圧縮比
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6.0:1
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5.42:1
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実馬力
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75馬力
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65馬力
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回転力(トルク)
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22.0kg・m
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140フィート・ポンド(19.4kg・m)
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クランクシャフト軸受部
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4カ所
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3カ所
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同材質
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特殊鋳物(鋳鋼)
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炭素鋼(鍛造品)
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カムシャフト軸受部
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4カ所
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3カ所
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同材質
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特殊鋳物(鋳鋼)
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炭素鋼(鍛造品)
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吸気弁
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径40mm、座角30度
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径1インチ1/2(38.1mm)、座角45度
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排気弁
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径38mm、座角30度
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径1インチ13/32(35.72mm)、座角45度
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冷却装置
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→
ローター径78mm、8枚翼遠心ポンプ、冷却水容量19.7リットル |
強制循環水冷式、
ローター径69mm、4枚翼遠心ポンプ、冷却水容量15.7リットル |
ウオータージャケット
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シリンダー全長にわたる
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シリンダーの一部まで
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潤滑油給油装置
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歯車式オイルポンプ、圧送式、飛沫式、噴射式
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ベーン式オイルポンプ、圧送式、飛沫式
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- (出典)
- 『トヨタ自動車 取扱と修理法』(1940年2月1日発行)、トヨタ自工広報誌『流線型』(1939年2月1日発行)42~45ページ「国産新型車トヨタトラックの解剖」
- (注)
- なお、1940年3月1日発行の「トヨタ自動車 取扱と修理法」では、さらに改良された仕様になっており、出力は78馬力に増大。
なお、B型エンジンの搭載車種は、GB型トラック(1939年、GA型改良)、AA型乗用車(1939年)、AC型乗用車(1943年、AA型改良)、KB型トラック(1942年)、KC型トラック(1943年)、BM型トラック(1947年)、BX型トラック(1951年)などに搭載された。最大出力も75馬力から78馬力に向上し、さらに1953年には85馬力へと改良され、1956年末まで生産されたのち、後継機種のF型エンジンと交代した。
B型エンジンを搭載したGB型トラックは、1939年1月15~16日に全国の販売店で発表された。開発に際しては、GB型トラックに専念するため、GA型トラックの改良を中断するとともに、GA型の改良点をGB型の設計に反映した。GA型トラックは、在庫部品の残余分を消化するため、1940年9月まで生産を続けた。
GB型トラックの改良点は、操舵装置ウォームギアの改良(機械加工精度向上)、フロント・スプリング改良(強度向上)、スプリング・ハンガーの改良(強度向上)、Xメンバー・フレームの採用(フレーム剛性向上)などである。GA型との比較でみたGB型トラック・シャシーの仕様は、表1-7のとおりである。
表1-7 GB型トラック・シャシーの仕様(1939年)
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GB型トラック・シャシー
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GA型トラック・シャシー
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エンジン
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B型(3,389cc、75馬力)
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A型(206.8立方インチ<3,389cc>、65馬力)
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ホイール・ベース
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3.609m
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141・1/2インチ(3.594m)
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全長
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5.786m
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237インチ(6.02m)
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全幅
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2.051m
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80・3/4インチ(2.050m)
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自重
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1,720kg
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2,936ポンド(1,332kg)
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- (出典)
- 「トヨタトラック」カタログ、「トヨタ・トラック仕様書」(GA型:1937年、GB型:1939年)
GA型を大幅に改良したGB型トラックではあったが、なお性能面で不具合な点があり、それらの改良に努めたことは、既述のとおりである。