第2節 環境・安全問題への対応

第3項 限りある資源を有効活用

リサイクルへの取り組み開始

1990年代は、バブル経済崩壊とともに使い捨て時代が終焉し、循環型社会構築への転換が求められる時代となった。日本では1993(平成5)年に「環境基本法」、2000年には「循環型社会形成推進基本法」が制定された。その後、容器包装・家電さらに自動車など個別製品別のリサイクル法が整備され、リサイクル率などが規定されることとなった。

トヨタは、かねて自動車の開発・生産・物流・廃棄というライフサイクルのなかで廃棄物を極力減らすとともに、可能な限り再利用・リサイクルする活動を進めてきた。具体的には1970年代にモータリゼーションが急速に進展するなか、将来の大量発生が予想される廃車の適正処理・リサイクルの必要性を考え、業界に先んじて大型のシュレッダーマシンを導入し、豊田通商、愛知製鋼との共同出資で豊田メタルスクラップ(現・豊田メタル)を設立した。同社は自動車リサイクルの重要な拠点として資源循環活動の充実を担っている。

社内体制としては1990年に「リサイクル委員会」を発足させ、時代ニーズを先取りしたテーマを審議、推進してきた。1991年からトヨタ販売店や整備専業者などで発生する廃バンパー回収と樹脂部品への再利用を開始し、2004年度に年間80万本を超えて以降、高水準の回収・再利用を維持している。

リサイクル処理技術の開発では、1998年、豊田メタル内に月間1万5,000台の処理能力をもつ使用済み自動車シュレッダーダスト(ASR:Automobile Shredder Residue)のリサイクルプラントを世界に先駆けて建設した。ASRの中から再生素材を分別して防音材を開発し、自動車の各部位に採用するなど、2010年度までに累計2,000万台に搭載している。

また、解体技術の開発では2001年、豊田メタル内に自動車リサイクル研究所を設立、トヨタの開発・設計部署と連携し「解体しやすい車両構造」「適切で効果的な解体技術」「易解体ツール開発」などに取り組み、その成果を技術部門にフィードバックするとともに、解体事業者向けにも適宜、情報公開している。

2000年からはエコプラスチックを自動車に採用するなど、再生可能な資源の活用にも取り組んできた。2011年1月発売のレクサスCT200hでは、自動車内装表皮材として、世界で初めてバイオPET1を使った新しいタイプのエコプラスチックを採用した。

一方でトヨタは2002年7月制定の「自動車リサイクル法」において、日本自動車工業会の環境委員長会社(当時)として、トヨタグループ各社の総力をあげて制度設計やシステム構築に積極的に取り組んだ。自動車業界は、運用組織としての自動車リサイクル促進センター(2000年設立)、自動車再資源化協力機構(2004年設立)を立ち上げ、制度の高精度かつ高効率な運用を図っている。

工場などから出る産業廃棄物については、生産技術部門の取り組みにより、第2次「トヨタ環境取組プラン」までに1990年度レベルの4分の1以下に低減したあと、第3次プランでは2000年12月の時点で全工場からの埋立廃棄物ゼロを達成した。また、焼却廃棄物については、2005年度末までに1990年比で3分の1以下を目指す計画であったが、目標を上回る87%減を実現した。さらに、第4次プランでは売却リサイクル品などを含む社外排出物総量をターゲットとし、2010年度には売上高当たり排出量を2000年度比20%減とする目標を掲げた。

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