第2節 環境・安全問題への対応

第1項 環境問題への全社取り組み

「トヨタ基本理念」と「トヨタ地球環境憲章」の制定

1987(昭和62)年に「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が採択されるなど、1980年代末から地球規模での環境問題が大きくクローズアップされるようになった。1991(平成3)年4月には経済団体連合会(経団連、現・日本経団連)が「地球的規模での持続的発展が可能な社会の実現を目指す」という基本理念のもとに、「経団連地球環境憲章」を制定したのをはじめ、日本の産業界でもさまざまな取り組みが本格化した。

トヨタでは、1992年1月に「どのような会社でありたいか」を明文化した「トヨタ基本理念」とともに、「トヨタ地球環境憲章」を策定した。基本理念の第2項では、「クリーンで安全な商品の提供を使命とし、住みよい地球と豊かな社会づくりに努める」と定め、地球環境憲章はその具現化のために制定された。憲章は「基本方針」「行動指針」「体制」の3つの枠組みで構成し、排出物質を極力抑えた自動車の開発や生産活動、社会の一員としての協力などを行動指針に掲げた。

取り組み体制としては、豊田章一郎社長を委員長に経営トップ層による「トヨタ環境委員会」を新設し、環境を経営の最重要課題の一つとして推進する方針を内外に示した。また、仕入先や販売店など関係各社との協力も、従来に増して強化していくこととした。さらに、1993年2月には地球環境憲章を具体的に企業活動に反映させるための「トヨタ環境取組プラン」を策定し、1993~95年度に第1次プランとして実行に移していった。

この第1次プランでは、開発分野での排出ガスの低減やトップレベルの燃費達成、生産分野での省エネ・エネルギー転換や生産用特定フロン全廃など、22項目について推進した。「トヨタ環境取組プラン」は第2次(1996~2000年度)から5年ごとに拡大・発展させる方式とし、第2次では環境マネジメントシステムの国際規格(ISO14000シリーズ)への対応など、第3次(2001~05年度)では連結ベースでの環境対策の推進も重視し、廃棄物を出さない生産活動の追求などに取り組んだ。

この第3次の策定を前にした2000年4月には、制定後8年が経過した地球環境憲章を改定し、「ゼロエミッションへの挑戦」や「循環型社会づくりへの参画」など、時代の要請に適応した視点を盛り込んだ。その後、2006~10年度に実施された第4次プランでは、「単独からグループへ」「国内からグローバルへ」という第3次からの取り組みを継承しながら、「エネルギー・温暖化」「資源循環」「環境負荷物質」「大気環境」の4大テーマを掲げて推進した。

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