第2節 環境・安全問題への対応
第2項 温室効果ガスの削減と環境負荷物質対策
環境負荷物質の低減
揮発性有機化合物(VOC)などの大気環境汚染物質については、1990年代後半に世界各国で環境汚染物質排出移動登録(PRTR)制度が導入され、日本でも1999(平成11)年に関連法が施行された。トヨタでは、第2次プランからVOCである塗装溶剤排出量のいっそうの削減を推進する一方、関連法の施行に先駆けて情報公開も行った。第3次プラン以降はPRTR対象物質の総量およびボデー塗装面積当たりのVOC排出量について、トヨタ単体や国内・海外連結会社での低減目標を設定して取り組みを進めた。
塗装工程でのVOC低減は塗料の水性化や設備の改良など、さまざまなアプローチが必要とされた。生産技術部門では1980年代後半から豊田中央研究所との共同開発により、塗着効率を向上させて塗料の使用量を削減する「メタリックベル塗装機」を開発し、順次ラインに導入した。また1992年には、トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・UK(TMUK)で上塗りベース塗料の水性化を行い、さらに2001年にトヨタ・モーター・マニュファクチャリング・フランス(TMMF)では水性塗料でも溶剤塗料と同等の塗着効率を確保でき、色変え時の塗料損失を削減できる「カートリッジ塗装方式」を実用化した。これらの技術により上塗りベース塗料の水性化が始まり、2002年には田原工場の第1塗装ライン更新にあたって上塗りベース・中塗り塗料ともに水性化を実現し、これ以降の新設・更新投資では順次同様のラインとしていった。
製品に含有する環境負荷物質に関しては、欧州で2007年から自動車メーカーに使用済み車の無償引き取りとリサイクル率達成を義務づける2000年の「欧州連合(EU)廃車指令」への対応を契機として、グローバルな視点で鉛、水銀、カドミウム、六価クロムの環境負荷4物質の削減に取り組んだ。2006年には国内の全生産事業体で4物質を全廃し、2007年末には海外の主要工場でほぼ全廃した。その後、これら特定4物質のみならず化学物質全体の使用、管理の重要性が増しており、同様の視点で取り組みを開始した。