第8節 ITとの融合、新エネルギーへの挑戦

第2項 エネルギー問題への対応

ハイブリッド技術、既存エンジンのさらなる進化

2000年代半ばからはハイブリッドシステム自体の進化にも取り組んだ。その一つが、外部からの充電も可能とし、電池容量を拡大してEV走行の距離を延長したプラグイン・ハイブリッド車(PHV)の開発であった。

2007(平成19)年7月に2代目プリウスをベースに、電池の搭載量を2倍に増やし、100Vおよび200V電源から充電できるPHVを製作した。このPHVは、国土交通大臣の認定を取得し、国内での公道試験データを収集したほか、同年から2008年にかけて米国、フランス、イギリスでも公道試験を行った。トヨタでは、環境・エネルギー問題に対応する最有力候補車の一つとして、PHVの開発を進めていった。

一方、初代プリウスの開発がヤマ場を迎えていた1990年代半ばには、既存の内燃機関でも排出ガスや燃費性能を大きく改善する技術開発に取り組んだ。その大きな成果が、1996年発売のコロナプレミオに搭載された直噴ガソリンエンジン「D-4」である。希薄燃焼を採用することで、従来の同等排気量エンジンに比べ、トルク性能で約10%、燃費で約30%の向上を実現した。

D-4の実用化では、希薄燃焼により発生量が増えるNOx(窒素酸化物)対策が鍵となり、トヨタは「NOx吸蔵還元型3元触媒」を開発してこの問題を克服した。D-4エンジンの採用拡大に伴って同触媒も急速な進化を遂げ、その成果により、1999年度の「触媒学会賞」を受賞した。

このほかのエンジンの改善では、吸気バルブの開閉タイミングを最適に制御する技術の進化版として、1995年にVVT-i(連続バルブタイミング可変機構)、2007年にはVALVEMATIC(連続バルブリフト可変機構)を実用化した。また、信号停車時などにエンジンを停止させるアイドリングストップ装置は、1981年にスターレットで初採用していたが、2003年には全自動式のシステムを新開発し、ヴィッツの無段変速機(CVT)車に搭載した。エンジン停止中や再始動時の電力供給を補うため、新たにリチウムイオン電池を開発し、鉛電池との2電源方式としたことなどに特徴があった。燃費改善効果は約9%を確保し、2003年度の経済産業省の「省エネ大賞」を受賞した。さらに、燃費向上につながるCVTについても、1990年代末から自社開発を進め、2000年発売のオーパに初めて採用した。

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