第8節 本格的乗用車トヨペット・クラウンの登場

第2項 大型トラック、全輪駆動車、ディーゼル・エンジンの開発

BX型トラックの開発

4トン積みBM型トラックは、エンジンが改良されたとはいうものの、1942(昭和17)年3月に生産を開始したKB型トラックと質的水準はほとんど変わりがなかった。トヨタ自工では、このような戦中から戦後にかけて生じた技術とスタイリングの停滞を取り戻すため、新大型トラックBX型の開発を計画し、1949年11月に本設計に着手した。

開発はおおむね計画どおりに進行し、目標とする1950年8月には切り替えが行える状況になった。ところが、同年4月におこった労働争議により2カ月の遅れを余儀なくされたほか、その後に行われた人員削減、朝鮮特需への対応などが重なり、結局、BX型トラックの発売は、1951年8月までずれ込んだ。

4トン積みBX型トラックの仕様は、表1-34のとおりであり、特徴としては、次の点があげられる。

表1-34 BX型トラックの仕様(1951年)

項目
内容
エンジン
B型(3,386cc、82馬力)
ホイール・ベース
4,000mm
全長
6,610mm
全幅
2,190mm
全高
2,190mm
シャシー重量
960kg
車両重量
2,970kg
積載重量
4,000kg
最高速度
72km/h
(出典)
トヨタ技術会『トヨタ技術』1951年6月1日
  1. 1.運転台のボデー・スタイルが飛躍的に近代化され、居住性も向上した。
  2. 2.シャシーのフレーム関係の強度が増した。
  3. 3.車体加工を簡素化し、加工工数をBM型トラックに比べて30%低減した。
  4. 4.左ハンドル仕様を織り込んで設計し、その製造を容易にした。
  5. 5.運転台を全鋼製とし、完成運転台付きシャシーを基本として販売するようにした。

それまでのトラック販売は、エンジン・ルーム付きシャシーで販売店に引き渡されるのが通常であった。運転台(木骨鋼板張り)と荷台は、顧客の要望に応じて、販売店の手配によりボデー・メーカーで架装されていた。BX型トラックではこの方式を改め、全鋼製の完成運転台をトヨタ車体で架装して、販売店へ出荷することが基本になった。

しかし、当初は従来のボデー架装方式に慣れた販売店の要望から、運転台付きの出荷は少なかった。その後、プレスや溶接などのボデー製造設備の量産体制が整うとともに、全鋼製の完成運転台付きシャシーの品質と価格の優位性が認められるようになり、完成車販売が普及し始めた。ボデー・メーカーは、トヨタ自工の製造工程と不可分の関係になったのである。

1951年9月にはBX型トラックのエンジンをB型(82馬力)からF型(95馬力)に変更したFX型トラックを発売した。また、積載量の増大志向に対応し、1954年4月に4トン積みBX型・FX型トラックの全面改良を行った。

続いて、1955年には改良B型エンジン(85馬力)搭載の4トン積みBA型トラックと、改良F型エンジン(105馬力)搭載の4.5トン積みFA型トラックを発売1した。このうち4.5トン積みFA型は、同年9月に5トン積みFA5型に変更された。

1950年代半ば以降、高度経済成長の幕開けを背景に、トラック輸送の長距離化・大量化の傾向が強まった。こうしたニーズに応えて、1956年4月に5トン積みFA5型をFA60型に大幅改良し、4トン積みBA型を廃止した。また、燃料経済性の高いディーゼル・トラックの需要が増大したことを受け、1957年3月にFA60型のF型ガソリン・エンジンを新開発のD型ディーゼル・エンジンに換装した5トン積みDA60型トラックを発売した。

このページの先頭へ