第4節 世界各地で充実する海外事業

第6項 中南米・中近東・アフリカ

中近東

中近東地域では、1980年代に入ってからの原油価格の下落や打ち続く戦火の影響により、トヨタの事業も大きな変化を余儀なくされた。サウジアラビアやクウェートなど、湾岸協力会議(GCC)6カ国でのトヨタ車の販売は、1982(昭和57)年の24万7,000台をピークに、1986年には7万5,000台へと落ち込んだ。その後、徐々に回復したものの、1990年代末まで10万~15万台の水準で推移した。

GCC6カ国のディストリビューターはすべて現地資本であり、そのうちの一部企業は1950年代からトヨタとの取引があった。トヨタでは、これらディストリビューターとのコミュニケーション強化や不具合への早期対応を図るため、1985年にサウジアラビアのジェッダ市に駐在員室を開設した。1990(平成2)年からは各国でレクサス車の扱いも始まり、1993年4月にはサウジアラビアのディストリビューターALJ社がレクサスセンターを開設した。

1990年8月のイラク軍によるクウェート侵攻で、トヨタのクウェートにおけるディストリビューターMNSS社の社屋や車両なども壊滅的な被害に遭った。イラクに派遣されていたトヨタの海外サービス部員や日野自動車、住友商事の社員は全員無事に帰国したものの、イラク政府からの出国許諾を得るまでに時間を要したため、いわゆる「人間の盾」と呼ばれる事態に遭遇した。そして湾岸戦争終了までジェッダおよびバーレーン駐在員は、危機回避のため一時退避を余儀なくされた。

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