第3節 「第2の創業」―社内改革の推進

第2項 「第2の創業」に向けて

「トヨタ2005年ビジョン」「2010年グローバルビジョン」の策定

最初の基本理念が制定された1992(平成4)年当時から経営陣には、いわば企業哲学である基本理念をベースにして、長期的に目指すべき方向を示した長期ビジョンが必要との認識が強まっていた。そして1993年7月に全社横断的に業務改革を推進するBR(Business Reform)活動がスタートしたのを機に、経営企画部を事務局として長期ビジョンの策定作業に着手した。

素案の作成に際しては、海外事業体を含む社内各部署や役員、さらには労働組合や社外関係者なども含むアンケート、聴き取り調査を実施し、1995年2月には役員研修会でも審議を行った。こうして「調和ある成長―Harmonious Growth」を基本テーマとする「トヨタ2005年ビジョン」が制定され、1996年1月に奥田碩社長(1995年8月就任)から全社に発表された。

「トヨタ2005年ビジョン」は巻頭で「トヨタ第2の創業期が始まります」と訴え、創業の原点に立ち返っての挑戦を全社員に呼びかけた。そして人・社会、地球環境、世界経済との調和を重視し、株主、社員、取引先などトヨタとかかわりをもつ多くの人々(ステークホルダー)とともに「調和ある成長」を目指すことを掲げた。この方針に基づき各事業分野では、それぞれのテーマビジョンと長期に目指すべき定量目標を設定して、事業活動の展開に踏み出した。

1990年代後半になると、環境やIT分野で次世代技術の開発が急速に進展するとともに、自動車業界では1998年のダイムラー・ベンツ社とクライスラー社の合併を契機に合従連衡が進み、地球規模の大競争時代に突入した。そうした環境の変化に「トヨタ2005年ビジョン」で定めた目標がそぐわない事業分野も出てきたため、2001年4月には新たなビジョンの策定に着手することになった。外部識者への聴き取り調査や同年9月の役員研修会での討議、さらには副社長会での審議などを経て、2002年4月に「2010年グローバルビジョン」が張富士夫社長(1999年6月就任)により発表された。

「2010年グローバルビジョン」では、「Innovation into the Future~豊かな社会創りに情熱をかけて~」を基本テーマに掲げ、「モノづくり」と「技術革新」を基盤としたさらに豊かな社会の実現を目指す視点とした。21世紀前半に期待される社会の姿を踏まえ、トヨタが「目指すべき企業像」と、その実現のための「変革の視点(パラダイムチェンジ)」を提示し、従来の体質や手法の大胆な見直しに果敢に取り組むよう訴えた。

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