「ココロハコブプロジェクト」と東北生産体制の強化

東日本大震災の直後からトヨタは、役員や従業員を含む義援金の寄付、グループ会社や販売店と連携した生活物資・車両の提供など被災地の復興支援を進めた。2011(平成23)年6月にはそうした取り組みをさらに強化するため「ココロハコブプロジェクト」を立ち上げた。支援の「心」を被災地の方々に「運ぶ」という想いを込めたもので、トヨタおよび販売店の従業員が自ら企画するとともに、運営にも主体的に参加する活動としている。

プロジェクトでは、①岩手、宮城、福島、茨城各県の特産品を全国の販売店やレンタリース店、部品共販店に斡旋して、お客様へのノベルティとして活用、②アムラックス東京やメガウェブ(MEGA WEB)などトヨタの関連展示施設でのチャリティイベント、③小学生を対象にクルマを楽しく学ぶ「トヨタ原体験プログラム」の被災地での開催、などが展開された。

また、復興の原動力は子どもたちの成長という観点から、震災孤児・遺児の育英基金として設立された「いわての学び希望基金」(岩手県)など、宮城、福島を含む3育英基金に、トヨタはそれぞれ1億円を寄付した。さらに、災害時に役立つクルマの導入として、ハイブリッド車(HV)に最大1,500ワットの外部電源供給システムをオプション設定することも決めた。エスティマハイブリッドに搭載していた同システムが、大震災時に役立ったとの声が多数寄せられたためであり、2012年夏をめどに、まずプリウスに設定し、順次導入車種を増やす計画である。

トヨタは2008年の世界的な金融危機を契機として、大震災以前の2010年5月にグループの車体メーカーを含む生産体制再構築の検討に着手していた。大震災後の2011年7月には「東北」を、中部、九州に次ぐ「第3の国内生産拠点」との位置づけを明確にし、モノづくり活動の強化を通じて復興支援に取り組む方針を打ち出した。

その具体策として同月には関東自動車工業、セントラル自動車、トヨタ自動車東北の3社が、1年後の統合に向けた協議を進めると発表した。同時に、東北は「コンパクト車に専門性をもつ第3拠点」として車両開発から生産までを一貫して担い、エンジンなどのユニットや部品も生産・調達し、自立化を図ることとした。

同年10月には統合による新会社の名称をトヨタ自動車東日本とし、社長にはトヨタの白根武史専務役員が就任することを内定した。さらに3社は、12月に本社を宮城県黒川郡大衡村に置き、関東自動車工業を存続会社に、セントラル自動車とトヨタ自動車東北を吸収合併するなど、統合の主要条件に基本合意した。2012年7月1日、トヨタ自動車東日本は資本金68億5,000万円で合併・新発足した。

同社は、「モノづくりは人づくり」というトヨタの理念に基づき、2013年4月に企業内訓練校の「トヨタ東日本学園」を開校し、東北地域の工業高校新卒者を対象に生徒を募集して、1年間の教育を行うこととした。第1期生は15人程度を計画している。また、近隣企業からの人材受け入れも行っていく予定である。

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