第1節 豊田佐吉の発明と考え

第3項 名古屋進出

豊田商店

豊田佐吉は、1894(明治27)年に糸繰返機を発明し、同年6月27日に特許を出願した。特許第2472号「糸繰返機」の特許明細書に記載された佐吉の住所は「名古屋市朝日町12番戸」寄留である。その半月ほど前、6月11日には長男喜一郎が誕生していた。

佐吉は、名古屋市朝日町(現・中区錦付近)に豊田商店を設け、糸繰返機を販売しながら、動力織機の開発に取り組んだ。糸繰返機の販売には佐吉の弟平吉も協力し、関東地方の販売を担当した。その後、1896年に動力織機の試作が完成すると、試運転のための動力源が必要になり、平吉は動力を担当した。中古の蒸気機関を購入して、自らその整備にあたり、何とか動力織機を動かせるようにしたという。

平吉や佐助(末弟)の協力もあって、豊田商店の事業は順調に拡張していった。1897年には名古屋市武平町3丁目15番地(現・東区泉1丁目付近)に工場を増設し、さらに1906年1月には名古屋市西区島崎町1番地(現・中村区名駅付近)に島崎町工場を建設した。工場の敷地面積は、武平町工場が400坪(1,300m2)であったのに対して、島崎町工場は2,856坪(9,400m2)と7倍の規模に広がった。この間、1902年には豊田商店から豊田商会に改称した。発明の基盤は着々と整備されつつあった。

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