第4節 豊田自動織機製作所の設立

第1項 株式会社豊田自動織機製作所の設立

自動車事業への進出の準備

豊田喜一郎は、豊田自動織機製作所を設立したとき、すでに自動車事業への進出を想定して、機械加工設備や鋳造設備の計画を立案していた。トヨタ自工の設立時に作成された「豊田自動車製造株式会社設立趣意書」によると、「紡織機製作用トシテハ寧ロ必要以上ニ高級ナル工作機械」を導入したが、それは「自動車工業ニ移ル下準備トシテ(中略)職工ノ養成」が目的であったと、その意図が説明されている。1

具体的には、高精度の外国製工作機械、特別注文のフレーム穴3軸同時中ぐり専用機やプレーナー型4軸同時穴明け専用機、フレーム削り専用機、鋳造設備では電気炉や外国製造型機(モールディング・マシン)などを導入した。そして、チェーン・コンベアによる組立ラインを取り入れ、流れ作業で自動織機を組み立てるというように、のちの自動車事業に応用できる設備が多数採用された。

鋳物材料についても、織機の機台を構成する部品は、キューポラ(溶銑炉)で溶解するねずみ鋳鉄で十分であり、電気炉を使う高級鋳鉄は必要ではなかった。しかし、豊田自動織機製作所では、創業後まもなく、1.5トンの電気炉を購入し、電気炉鋳鉄の研究を開始した。その結果、のちに「ハイドラフト輪具精紡機」(後述)の製造を始めたとき、アーク式電気炉を用いて合金成分を適切に配合した強靭な合金鋳鉄をつくり、形状が正確で鋳肌が綺麗な鋳物部品を製作することができた。2

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