電算機の設計・生産部門への利用―CAD・CAMシステムの開発・導入

技術分野での電算機の利用は、1960(昭和35)年に間接相似型アナログ電算機を導入し、微分方程式の解析を行ったのが始まりである。同年に導入された事務用のIBM650型も一部技術用に用いられたが、1962年10月には科学技術用電算機FACOM202型を技術専用に導入した。

同機種は、1967年1月に高性能のFACOM230-50型に切り替えられた。これにより、多自由度の車両運動解析、ボデー構造の強度・振動解析、トルコン油圧回路解析など、大容量メモリを必要とする計算が可能になり、電算機の利用分野は一挙に広がった。例えば、FACOM230-50型は生産技術部門のNC(数値制御)加工の研究にも利用され、NC加工技術の確立に貢献した。

電算機の利用範囲の拡大とともに、1969年前半になると、電算機の月間稼働時間は400時間(稼働日1日当たり20時間)を超え、さらに24時間終日稼働、あるいは休日運転といった厳しい運用状況となった。そこで、多数の端末利用者が同時に1台の電算機を使用できる本格的なタイム・シェアリング・システムの採用が検討され、それに適した機種として、同年12月にUNIVAC1108型を導入した。

当時は開発車種が増加し、新車開発の工数低減や期間短縮が課題となっていた。その解決策の一環として、UNIVACシステムの計算処理能力を利用し、プロジェクト・チームによるシステム開発が始まった。その代表例が「複合自由曲面加工システム(TINCA)」である。これは、電算機を用いてプレス型などをNC加工する、いわゆるCAMに属するシステムであった。

1969年10月に開発に着手された同システムは、1973年秋に第1期分が完了し、カローラ(KE30型)の外板部品加工に実用化された。プロジェクト・チームには、ボデー形状設計、型設計、NC加工、情報処理など、各分野の技術者がトヨタグループ各社からも多数参加し、共同開発を行った。

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