第1節 多様な車種開発と国内販売の拡充
第3項 生産体制の拡充と多種少量生産への対応
フレキシブル・ボデー・ラインの採用
生産技術部門では新車投入やモデルチェンジの増大に対応するため、柔軟性を備えた革新的なボデー溶接ラインの開発を進めた。その結果、1985(昭和60)年8月から堤工場でフレキシブル・ボデー・ライン(FBL)が本格稼働した。
1980年代初頭までのボデーラインは、2~3車種を同一ラインで組み立てるのが限度で、モデルチェンジの際には、専用設備の入れ替えに2~4週間はラインを停止しなければならなかった。これに対してFBLは、アンダーボデーやサイドパネルといったボデーの主要部品をロボットで溶接するとき、汎用性のある設備と車種ごとの専用設備を組み合わせることで多車種への対応を可能にしたものである。したがって、モデルチェンジに際しては当該車種の専用設備の改造や入れ替えだけで済むので、ライン全体を止める必要がなくなり、生産準備のリードタイムや工場スペースの圧縮に威力を発揮した。原理的には何車種でも流せるが、実用面から常時4車種が流せるようにした。
開発にあたっては1983年にプロジェクトを立ち上げ、試作ラインの設置や1年半にわたる堤工場での実動ラインでの試行運転を経て1985年の本格稼働につなげた。FBLは、国内工場や車体メーカーへの展開を進める一方、1988年に稼働した米国のトヨタ・モーター・マニュファクチャリング・USA(TMM、現・TMMK)にも海外拠点としては初導入され、海外への工場展開を図るうえでも基幹技術となった。
その後、FBLは1997年までに国内外で合計28ラインが導入され、1990(平成2)年度の大河内記念生産賞を受賞した。FBLの技術は、1990年代末からの次世代ラインであるグローバル・ボデー・ライン(GBL)の開発へとつながっていった。